京大など、半世紀以上に渡るウニの個体数の長期変動に関する調査結果を発表

2018年4月30日 11:27

 京都大学瀬戸臨海実験所、同志社大学、大阪市立自然史博物館、奈良女子大学は、京都大学の所有する自然保護区である和歌山県田辺湾の畑縞で、ムラサキウニ類、タワシウニ類、ナガウニ類の個体数に関する調査を、1963年から行っている(現在も継続中である)。このような長期的な継続研究は、ヨーロッパやオーストラリアには例があるものの、アジアではほぼ唯一であるという。その報告が、今回発表された。

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 発表者の代表は、中野智之 フィールド科学教育研究センター助教。今回の発表では、ウニの長期変動の傾向と、気候変動や海洋汚染といったヒトによるウニの生態系への影響が世界で初めて明らかにされた。

 この研究は、故・大垣俊一博士と故・小林直正博士を中心とした歴代の研究者によって連綿と続けられてきたものである。

 さて、報告の内容についてざっと見てみよう。まずウニの数の長期的変動である。1960年代から1970年代にかけては優占種として数多く生息していた畠島のウニであるが、70年代後半から80年代のはじめに急速な個体数の減少が起こった。

 なお、この時期というのは、ちょうど田辺湾で魚の養殖が盛んになり、同時に富栄養化によって引き起こされる赤潮の発生が多くなった時期である。

 その影響がどう及んだかは、ウニの種によってやや異なった。ムラサキウニはとくに水質悪化に弱く、赤潮の発生日数によって現象の幅が大きかった。ナガウニ類は冬期の水温の変動を大きく受けるようであった。以上のことから、ヒトの活動が野生のウニの生息数に間接的に影響を及ぼすことは疑いがないといえる。

 さて、この研究は、さらに50年間、全1世紀を目標として今後も続けられる予定であるという。今回の発表の詳細は、国際学術誌「Ecological Indicators」にオンライン掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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