NICT、ファイバ無線技術開発 リニア新幹線でも切れないネットワークに目処

2018年4月28日 17:50

 情報通信研究機構(NICT)は26日、線路に沿って無線局を設置するリニアセル方式と、無線信号を光ファイバへ重畳するファイバ無線技術を駆使し、高速移動中に通信を途切れさせないよう無線局を適時切替える方式を開発、現在の携帯電話回線の約20倍以上となる毎秒20ギガビットの無線信号の送信に成功したと発表した。

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 JR東海は2015年4月、山梨リニア実験線で超電導リニアの「高速域走行試験」を行い、時速603キロメートルという、有人走行での世界最高速度を記録した。

 将来の高速鉄道は時速500キロメートルを上回るスピードだ。今回の発表はそのような高速鉄道など、無線局の切替えが頻発する移動体においても円滑な高速通信が可能となることを実証。本論文は、光ファイバ通信国際会議(OFC2018)にて非常に高い評価を得て最優秀ホットトピック論文(Post Deadline Paper)として採択された。

●ミリ波帯を用いたファイバ無線技術の特長

 無線通信は、特定のエリアを担う無線基地局で、電波を送受信する。例えば、スマートフォンでは、常に近隣の無線基地局の電波強度を測定。電波がある一定の強度以下になると、それまでの回線を切断して、より強度の強い別の回線に切り替える。

 無線局の切り替えが頻発する高速移動体の無線通信を担う技術は、ファイバ無線技術とミリ波信号を利用した大容量無線通信技術だ。

 ファイバ無線技術は、シームレスに無線局を切り替える。無線局ごとに異なる波長の光信号を割り当て、列車の位置に合わせて、配信する光波長を高速に切り替える方式と、隣り合った2つの無線局へ送信する光信号を制御し、2つの無線局からの無線信号の干渉を低減する方式という。

●無線通信(NICT、ファイバ無線通信)のテクノロジー

 無線局の間隔を仮に1キロメートルとした場合、時速500キロメートルで列車が走行しても、秒速20ギガビットの信号が送信可能になる。

 一般的に高速鉄道では、運転指令所に列車位置情報が集約されることから、その位置情報を基にして信号配信する無線局を決めることが可能だという。この無線局設置をリニアセル方式と呼び、無線局間をわずか7秒で通過する列車での無線通信を可能にした。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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