医療保険制度の危機が迫る!医師も大方が危機感を抱く現状は?

2018年4月28日 10:58

 23日の日経新聞は、健康保険制度の維持に強い疑問を投げかけている。健康保険には、自営業者・非正規労働者・退職高齢者が対象の国民健康保険、大企業の社員が対象の健康保険組合、中小企業の社員が対象の協会けんぽ、公務員が対象の共済組合、75歳以上の高齢者が対象の後期高齢者医療制度などがある。日本が誇る「国民皆保険」の基盤を構成している。

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 この中で国民健康保険の財政が特に厳しい。自営業者や非正規労働者の加入者で構成されている上に、65~74歳の退職高齢者の受け皿でもある。団塊の世代の大量加入が続いているため、加入者の平均年齢が高く医療費が高止まりする宿命を抱えている。加えて、加入者平均の年収が低く保険料収入の増額が難しい。今年4月から市町村単位の財政運営を都道府県単位に変更したものの、体質が変わったわけではないので厳しい財政状況の解決にはならない。

 大企業の社員で構成される健康保険組合も、平均保険料率が11年連続で上昇を続けている。保険料の負担がかさみ、「健康保険組合」として存続させる利点が失われた解散予備軍が、全体の2割300組合に及ぶ。国が所管する「協会けんぽ」へ移行すると、健康保険組合としての負担軽減にはなるが、付けを税金に回すだけの状況になる。

 日経新聞が昨年6月に実施したアンケート調査によれば、医師の半数(52%)が現在の「国民皆保険」は維持できない、と考えていた。持続可能と回答した医師(25%)でも「患者負担の増加」や「消費増税」との抱き合わせが条件と考えており、現状のままで存続が可能と考えている医師は少数派であった。

 国民医療費は15年度で概算41兆円に及ぶが、国民の負担する保険料と受診の際の患者負担で賄っているのはその6割程度で、およそ4割が税金等からの補填となっている。政府の推計では25年度の国民医療費は54兆円と見込まれており、高齢化がますます進展することを考えると、増加の上限が見えない状況だ。

 「支払い能力のある人にもっと払ってもらわないと維持できない」「皆保険を維持するため、国は増え続ける医療費に対応できる財源を確保すべきだ」「過剰診療も大きな問題。医師の意識改革も必要」「大病院の受診にはかかりつけ医の紹介状を必要にして、フリーアクセス(※)に一定の制限を掛ける」「高齢者や患者の負担を増加させるべきだ」「薬価だけでなく、医師の診療費も削減」「医療の効率化」「超高額薬の使用の適正化」等々、本質的な問題点に従来から変化はない。今必要なことの「総論」は明確だ。問題は、「各論」にどれだけ多くの賛同を集められるかどうかである。

 ※フリーアクセス:受診する医療機関を自由に選択できる制度。日本では、患者が望めば診療所、大学病院、専門病院まで、どこでも診てもらえる。これほど自由に医療機関へアクセスできる国は、世界的に多くはない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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