理研、ゲノム解析で日本人特有の遺伝的変異を解明 飲酒量や血糖値等に関係
2018年4月26日 07:01
理化学研究所は24日、大阪大学や慶應義塾大学、日本医療研究開発機構と共同で日本人のゲノム解析を行い、日本人の適応進化に関わる遺伝子領域を明らかにしたと発表。適応進化とは生物の性質が世代を経るにつれて周りの環境に応じて変化する現象で、日本人においてはアルコール代謝と栄養代謝に関わる遺伝的変異があったという。
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共同研究グループは日本人集団2,200人を対象に、生物の設計図であるゲノム配列情報に基づいて適応進化を解析した。ゲノム配列は4種類の塩基、アデニン、チミン、グアニン、シトシンが連なった塩基配列として細胞のなかに保存されている。
このゲノム配列には適応進化の過程で変化が生じる。そのためゲノム配列を調査すれば、どの遺伝子領域が変化する環境に適応し、遺伝学的に進化してきたかがわかる。今回の研究では近年目覚ましい発達を遂げたゲノム解析技術を用いて日本人のゲノムを調べ、適応進化の対象となった4つの遺伝子領域を見出した。
そしてこの遺伝的変異は地域の生活環境や地理的な条件に影響されるため、同じ日本人という集団内でも変異の頻度が異なる。研究ではそれを裏付ける形で、日本の各地域、とりわけ沖縄で頻度が違うことも確認された。
加えて日本人の適応進化に影響した形質についても調べたところ、医療現場などにおける検査の結果を表す臨床検査値および病気の発症に影響を与える遺伝的変異がみられた。
それは飲酒量などのアルコール代謝、ならびに血糖値や尿酸値、電解質、タンパク質、脂質など栄養代謝に関係する形質に影響を与える変異であり、これは他の人類集団とは違う日本人特有の適応進化の存在を示唆する結果だとされる。
適応進化は地球上の多種多様な動物に認められ、ヒトにおいても同様だ。例えばヨーロッパ大陸の人類集団は冷たく寒い土地に進出するなかで背が高くなった。高地に住むチベット人の集団は低酸素環境への適応が、アフリカでは病原体への感染防御が進んだ。
今回の研究成果は、そのような適応進化が日本人においてどう進んできたのかをより深く知るための大きな一歩になる。(記事:小椋恒示・記事一覧を見る)