安全性と経済性両立した風力発電所用の落雷検出装置 中部電と中部大が開発
2018年4月25日 07:12
中部電力と中部大学は23日、風力発電所の風車への落雷を高精度で検出でき、かつ低価格の新型落雷検出装置を共同で開発したと発表した。昭電が6月から販売を開始する。
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限りある化石燃料に代わる再生可能エネルギーには、太陽光、水力、風力、バイオマスなどがある。再生可能エネルギーは、CO2排出を伴わないクリーンなエネルギーであり、積極的な採用が必須である一方で、普及の壁は経済性である。今回の発表は、風力発電における落雷検出を低価格で実現する装置の開発である。
風車に落雷した場合、安全確保のため風車を自動停止させることが義務付けられている。そのため、風力発電所の風車には落雷検出装置の設置が必須だ。
高精度の落雷検出装置は、ロゴスキーコイル型と呼ばれる。風車タワー基部の全周を囲うように中空型のコイル(ロゴスキーコイル)を設置。雷電流によって発生した磁界によってコイルに流れた誘導電流を検知する仕組みだ。この落雷検出装置は高精度ではあるが、高価であり、普及は進んでいない。
他方、安価な落雷検出装置は、磁界センサを用いる。風車タワー1基に1個の磁界センサを設置する方式だ。安価ではあるが、近隣への落雷でも動作する例が多く、風車の稼働率を低下させ、経済性を損なう。
●新型落雷検出装置の特長
風車タワー1基に3個の磁界センサを設置。落雷により発生する磁界の大きさと方向から、落雷があった風車を正確に特定できるという。磁気センサ2個の追加で高精度と低価格を両立させた。
2017年10月から2018年3月までの半年間、実際の風車を用いたフィールド試験を実施。その間に8回の落雷があったが、8回全ての雷で正しく動作することを確認。簡単な構造であるにも関わらず、高精度であることを実証した。
また、ロゴスキーコイル型と比べて、3分の1から10分の1のコストで設置可能だ。
●新型落雷検出装置(中部電力と中部大)のテクノロジー
落雷があると電流が発生し、電流によって磁界が発生。磁界の大きさと方向をセンサで検出し、落雷の位置を特定する。風車タワー1基につき3個の磁界センサで磁界を検出することで、落雷位置の特定精度を高めた。
構造が単純なため設置が容易だ。既に運転中の風力発電所にも取り付け可能という。
洋上風力発電ではさらに経済的だ。洋上風力発電は設備を船で巡回するため、点検時間の課題がある。新型落雷検出装置を用いれば、落雷のあった点検すべき風車を特定でき、点検時間の削減につながる。(記事:小池豊・記事一覧を見る)