ソニーが宇宙ビジネスに参入へ 民間の宇宙開発競争は本格化するか?
2018年4月24日 12:16
宇宙開発の創成期には、米ソの2大国が国家の威信をかけた競争を繰り広げていたが、重厚長大の時代は終わりを告げて、時代は軽薄短小へとステージが転換した。2月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)から電柱サイズのロケット「SS―520」5号機を打ち上げた。約7分後には東京大学の超小型衛星「TRICOM―1R」(たすき)を分離し、予定軌道への投入にも成功した。コスト削減のため民生品を部品に採用しているが、所期運用を順調に進めて民生カメラによる画像取得実験にも成功した。この成功により、宇宙関連産業の裾野が拡大することが期待される。
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こうした積み重ねは衛星の周回個数の増加に繋がり、宇宙から得られるデータ量の増加が進んでいるが、宇宙との通信を支える地上アンテナの不足が指摘されているのに加えて、現在主流となっている電波での通信にはデータ容量や効率面での課題を指摘する声が多い。
そうした中、日経新聞はソニーが宇宙ビジネスへ参入すると報じている。ソニーは光ディスクの技術を応用して、宇宙と交信可能な光通信機器の開発を進めるという。円盤の金属薄膜に記録された数百億個以上の微細なくぼみ(1ミクロン以下のピット)にレーザー光線を照射して、反射する光の有無と長短を読み取る光ディスク技術を応用して、地上と1千キロメートル以上の隔たりのある宇宙空間との間の高精度通信を実現する。
16年における世界の宇宙産業は約35兆円の市場規模に成長したが、政府による支出は全体の20%を超える程度で、地表の画像データサービスなどに代表される商業利用の拡大が市場を活性化している。政府が主導していた時代の宇宙開発は、安全保障上の配慮によりコストを度外視した特注部品を使用していたため、膨大な費用が回り廻って開発の足枷になるというジレンマに陥っていた。民生品の活用は価格競争という市場原理が働くため、人工衛星のコストを大幅に削減し、衛星の利用拡大や宇宙関連ビジネスの活性化に繋がるものと期待される。
日本政府は衛星やロケットを打ち上げる企業の審査や許可を通して、競争力を備えた宇宙関連企業の育成を目指す。万が一の事故の場合には、被害の一定以上を国が補償する宇宙活動法を18年秋にも本格施行して、民間企業の宇宙参入を後押しする構えだ。
ソニーコンピュータサイエンス研究所はJAXAと組んで、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」と地上との通信実験を18年度中に実施したうえで、基礎技術を2年以内に確立し量産の世界一番乗りを目指している。ある調査によると、重量が50キログラム以下の超小型衛星の打ち上げは、16年の実績が約100基だったのに対して、23年には460基と4倍以上に急増する見通しがある。ソニーは周回衛星との情報通信という、打ち上げ目的の根幹を押さえて自社技術により事業化を目指すようだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)