京大開発の新たな人工皮膚、医療機器として製造承認
2018年4月21日 21:19
細胞治療に匹敵する皮膚再生を可能とする人工皮膚。京都大学の鈴木茂彦名誉教授、坂本道治医学部附属病院特定講師、森本尚樹医学部非常勤講師(関西医科大学准教授)らの研究グループによって開発されたものである。
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難治性潰瘍治療薬として使用される塩基性線維芽細胞増殖因子を吸着し、1週間以上をかけてゆっくりと放出する機能性人工皮膚だ。動物実験で有効性が確認されたあと、医学部附属病院臨床研究総合センター(iACT)の支援を受け、2010年から医師主導知見が行われ、今回、新規医療機器として製造承認が得られたため、発表の運びとなった。
再生医療は新しい分野である。新しい分野であるから、法整備であるとか、ガイドラインの制定であるとか、そういったものも道半ばであるということだ。ただ、2014年11月施行の再生医療等安全確保法によって再生医療の定義が行われたため、再生医療開発に向けた方法や順序などはようやく整備されてきたところであるという。
京大で今回の発表へと至る、人工皮膚に皮膚の細胞(皮膚線維芽細胞)を組み込み、培養することで皮膚を再生させる研究を開始したのは1990年代後半のことである。だが当時は細胞を実験や治療に使用してそもそもよいものなのかどうかも指針が固まっておらず、2006年の告示「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」があった程度で、はっきり言ってしまえば「手さぐり」の中で研究は続けられてきたという。
既存の人工皮膚はコラーゲンスポンジをシリコーンフィルムで覆った二層構造を持つものが多いのだが、これは感染に弱く、また血行のよくない部位では再生がうまくいかないという難点があった。これを克服したのが今回の研究だ。
ちなみに今回の人工皮膚の開発を行ったのはグンゼ社である。使用承認を受けた疾患並びに症状は、熱傷III度、外傷性皮膚欠損など。
なお、本製品は、数カ月後の発売を予定しているという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)