髪の色を決定する123の遺伝子が発見される
2018年4月21日 11:20
●発見された遺伝子は123、今後も増える可能性
オランダのエラスムス・ロッテルダム大学、イタリアのトリエステ大学、ミラノのサンラッファエレ病院の共同研究チームは、髪の色を決定する123の遺伝子を発見したと発表した。この研究結果は今後、皮膚癌の治療や犯罪がおこった際の犯人の特定に役立つと考えられている。研究結果は、医学雑誌「Nature Genetics」に掲載されている。
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●色を決める2種のメラニン
今回の調査研究に当たっては、黒髪、金髪、褐色、茶色、赤色などさまざまな色合いの髪の毛について、じつに30万人を対象に分析が行われた。
遺伝子と髪の色の関連を理解するためには、生物学的に髪や肌の色素を決定するといわれるユーメラニンとフェオミラニンという2種のメラニンが重要な要素となる。ユーメラニンは濃色を、フェオメラミンは赤色と黄色を生み出す。メラニンは、メラニン細胞に存在するオルガネラとメラノソームから合成される。髪の毛や体毛は、メラノソームはメラニン細胞から除去され、メラニン細胞が成長中に外側に引き出される。
●人間の歴史の中で変化してきた髪と肌の色
研究によると、初期の人間の髪や肌は太陽光から保護するために色素が非常に濃かったといわれている。ヨーロッパ人やアジア人は、北への移動をはじめる過程で肌の色が薄くなっていった。色素の沈着が少ない場合、日照時間が限られている区域では紫外線を可能なかぎり吸収しビタミンDの合成を可能にしなくてはならないためである。とくにヨーロッパ大陸においては、緯度に応じて色素沈着の相違が顕著である。
ただし、髪や肌の色を決定する遺伝子学定義は決して簡単な問題ではなかった。研究チームは双子の例を分析し、髪の色の変化は97%が遺伝によるものであるとしている。また、バイオバンクの「23andMe」や「UK Biobank」のゲノムに関する研究と照らし合わせ、123におよぶ髪の色に関連する遺伝子を発見した。そのうち13の遺伝子は、これまで発見されていなかったものである。
●腫瘍の原因を探るために役立つ遺伝子
そして今回の研究がとくに注目されているのは、30万人のヨーロッパ人の遺伝子分析と色素沈着の研究により、多くの腫瘍の原因をつきとめることが可能になるとされている点である。腫瘍は、皮膚だけではなく前立腺、卵巣に発症したものも含まれる。
また、色素沈着における研究では最大級の規模であることから、悪性黒色腫の治療の向上に貢献するだけではなく、生物学的な分野でも有益な結果を多く含んでいると期待されている。人間の外見の多様性がどのように変化してきたか、色素に関する遺伝子が社会的相互作用とどのような適応をしてきたのかなど、今後の研究も注目されている。