ローム、SiC市場の急成長を睨んだ新棟建設 世界シェア3割目標

2018年4月16日 13:43

 京都の電子部品メーカー「ローム/ROHM」が、SiCパワー半導体に積極投資。生産能力拡大で世界トップを狙う。

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 近年、注目されているSiC(炭化ケイ素/シリコンカーバイト)半導体は、これまで半導体の主流だったSi(シリコン)半導体の限界を大きく超えるパワーデバイスとして期待されている。

 単純に数値で比較すると、SiCは絶縁破壊電界強度がSiの10倍、バンドギャップがSiの3倍と優れている。また、SiCを使ったパワーデバイスは、エネルギーの損失が非常に小さい。テクニカルな言語での表現によると“導通損失”と“スイッチング損失”がSiに比べて極めて小さいという。

 ここで、パワーデバイスという言葉について、一般には馴染みが薄いので簡単に触れておこう。パワーデバイスとは「電力を変換する電子部品」で、電力の「電圧」「電流」「周波数」のいずれか、ひとつ以上を変換する道具だ。良く耳にする単語では、家庭用エアコンや洗濯機などの白モノ家電にも採用されている「インバーター」がそのひとつで、インバーターは直流電流(DC)を交流電流(AC)に変える装置だ。また、小型家電やノートPCなどに付属するACアダプターは、家庭のコンセントなどからくるACをDCに変換するパワーデバイス「コンバーター」の一種である。

 そのパワーデバイスに使う半導体材料をSiからSiCに変えるメリットは大きい。ひとつは前述したエネルギー損失が少ないことだ。Siに比べてSiCの導通損失は50~80%少なくなり、スイッチング損失にいたっては70~90%も減らせるという。さらに、その低抵抗・高速作動、さらに高温環境でも動作する性能を活かし、装置そのものの小型化に貢献する。

 こうしたSiCの特性から、環境性能を重視した太陽光発電などのエネルギー分野、ZEV(ゼロエミッション車)の中核となりそうな電気自動車(EV)などで、その採用が今後飛躍的に高まると予想される。xEVの普及には、省エネルギーを含めた駆動用モーターの最適な制御、快適な加減速と運動性能、エネルギーの回生、電動航続距離の延伸、充電時間の短縮(急速充電器)、バッテリーの小型化およびコスト低減など課題が多いが、SiCはそれらを達成する一助となるだろう。

 2025年のSiCパワーデバイスの市場は、世界の半導体市場関係者の間では現状の3倍とする説から7倍に達するという意見まで大きなバラツキがある。そんな中ロームは、「SiCの市場規模は、純粋なEVのほか、プラグインハイブリッド車/PHEV、燃料電池車/FCVなどを含む電動駆動車/xEVの世界的な普及に大きく影響をうけて約5倍に達する」という見方を示した。。そして拡大するSiC需要に対応し、安定的な供給体制を整えるため、同社は福岡県のローム・アポロ築後工場に新棟を建設し、SiCパワーデバイス生産能力の強化を図ると発表した。

 新棟は地上3階建て、延べ床面積1万1000平方メートルで、2019年2月に着工し、翌年12月に竣工予定。ウエハの大口径化(6inch & 8inch)に対応した最新設備が導入される模様だ。

 ロームは、この新棟増設を発端として2025年のSiCパワーデバイス生産能力を現在の16倍とし、世界市場シェアで業界トップの30%を狙う。投資額は累計600億円に達する予定だ。(編集担当:吉田恒)

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