福島県双葉郡に待望の県立病院が開院

2018年4月10日 11:00

東日本大震災から7年。福島が少しずつ元気を取り戻しつつある。しかしながら、未だに多くの人々が県内外で避難生活を続けている。避難のピークとみられる2012年5月の164,865人からは10万人以上減ったものの、2018年2月の時点でもまだ50,641人の避難者が確認されているのが現状だ。

 そんな中、福島県双葉郡に新しい県立病院「福島県 ふたば医療センター附属病院」が誕生し、4月1日には開院式が行われた。診療は23日より開始する。

 福島県の内堀雅雄知事も「住民の安心には地域医療確保が不可欠」と述べており、被災地では医療施設の早急な整備が求められていた。東日本大震災以前、双葉郡には入院治療を必要とする患者に対応できる二次救急医療機関がいくつかあったが、震災以降はすべて休止状態。それだけに地元住民の新病院にかける期待は大きい。

 同病院は県立医科大学や近隣の中核病院、診療所等と連携・役割分担しながら行う地域診療や、「24時間365日救急医療対応」の二次救急医療、在宅医療、高齢者医療の確保を図る。

 病院の建物は重量鉄骨2階建て、延べ床面積約3,950平方メートル。設計・施工は積水ハウスが担った。同社の工業化住宅「βシステム構法」を用いることで、工場化住宅のメリットを活かし、延べ床面積が同じ鉄筋コンクリート(RC)造では最短でも13から15ヶ月程度かかる工期をわずか8カ月程度に短縮できた。また、院内は医療従事者の負担を軽減する効率的な導線設計や設備仕様などの高齢者に配慮した設計が随所に施されている。

 田勢長一郎院長は「とても立派で、内装も土台もしっかりしている建物なので、ハードだけでなくソフト(病院運営)もしっかりとしたものを目指す。あとは我々が対外的にも認められるような医療をしなければならない」と今後の抱負を語った。

 徐々にではあるものの、病院がある富岡町では住民帰還が進みつつある。開院式のちょうど1年前の昨年4月1日には、原子力災害に伴って設定された避難指示が解除された。JRもようやく富岡まで開通し、周辺の地域でも災害公営住宅や商店、公的施設の整備が進んでいる。そして、いよいよ待望の県立病院も開院するのだ。

 自分たちの住む町に病院がある。他の土地なら当たり前のことが、被災地の住民にとっては当たり前ではなくなってしまっていた。この病院の開院を機に生活インフラが整えば、長い避難生活を送っていた住民の方々も戻りやすくなり、復興も大きく前進するのではないだろうか。(編集担当:石井絢子)

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