理研、ガンなどの病原体に対抗する「記憶キラーT細胞」形成の仕組みを解明
2018年4月6日 11:40
ガンなどの病原体に対抗するために、生体防御システムの中で中心的な役割を果たす、記憶キラーT細胞の多用性が形成される仕組みが解明された。
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解明したのは、理化学研究所生命医科学研究センター組織動態研究チームの岡田峰陽チームリーダーを中心とした国際的な研究グループである。
ちなみに記憶キラーT細胞というのは、体外から入ってきたウィルスなどの外敵に対抗するために作り出される免疫細胞の一つ、キラーT細胞から分化したものである。
通常、キラーT細胞は役目を終えると大半は死滅するが、一部の細胞は分化して記憶キラーT細胞となり、次に同じ外敵が進入してきた時、即座に増殖して対抗するのである。
そしてまた、外敵に新たな発見があれば分化し、新たな記憶キラーT細胞となる。ワクチン療法でもこのしくみを利用している。
しかし、機能的に異なる記憶キラーT細胞がどのように分化するかは不明な点も多く、死滅するケースや記憶キラーT細胞にまでならないケースも存在するため、分化のしくみを解明することは重要な課題の一つであった。
そこで研究グループは、強い抗体刺激を受けたキラーT細胞が発現するKLRG1に注目し、KLRG1発現の有無と記憶キラーT細胞への分化の関係を解析する方法「細胞系譜追跡法」を確立させた。
この手法をインフルエンザウィルス感染のモデルや皮膚ガンのモデルなどに適用し、多用な記憶多様な記憶キラーT細胞がどのように形成されるかを調べたのである。
すると、記憶キラーT細胞の多様性の形成には、抗原刺激の強度が重要な役割を果たしていることが判明した。特に中程度の抗原刺激を受けたキラーT細胞は、KLRG1を一時的に発現することで、高い細胞障害活性と増殖能を持つさまざまな記憶キラーT細胞へと分化することが判明したのである。
今後の展望については、『exKLRG1細胞の特異的マーカーや分化機構を詳細に解析することで、感染症やがんに対するキラーT細胞の生体防御能を反映する新たなバイオマーカー検索に貢献することが期待できる』としている。(記事:和田光生・記事一覧を見る)