2018年マンガ大賞は「BEASTARS」に決定!これぞ人間賛歌の群像劇
2018年4月1日 07:13
■誰にもこびない漫画がマンガ大賞に決定
毎年の恒例となりつつあるマンガ大賞が2018年も発表された。この賞は出版社や本屋だけでなく読者層の意見も反映されることから、非常に注目されている賞だ。そして、今年の大賞に輝いたのは「BEASTARS」という漫画だ。
【前年は】マンガ大賞2017、1位は『響〜小説家になる方法〜』に決定
この漫画は最近の流行の1つであるかわいい女の子がとにかく出てきたリ、のほほんとした日常を切り取ったものではない。動物を擬人化しながらも、骨太な群像劇に真っ向から挑戦している漫画だ。
■「BEASTARS」のあらすじ
人間のように立って歩き、話すことができる動物たちがいる世界。その世界において中高一貫のチェリートン学園はエリートたちが通う全寮制の学校で、肉食・草食動物たちがそろって生活している。お互いの動物たちは自分たちが持つ本性と向き合いながらも、立派な動物として生活するため日々勉学に励んでいる。
しかし、チェリートン学園にて草食獣であるアルパカの生徒・テムが肉食獣に殺害される事件が起きた。この事件をきっかけにして肉食獣と草食獣の間の溝が深まるも、ハイイロオオカミのレゴシはいつもと変わりない様子で生活していた。
レゴシは他者を思いやるばかりに口数が少なく、知らない人からすれば少しとっつきにくい。テムが死んだ際も、彼が最後に成し遂げたかったことのために、疑われることを顧みることなく草食動物とコンタクトを試みるほどだった。
そんなレゴシはある件をきっかけに、ウサギのハルと出会うことになる。レゴシはハルに少しずつ惹かれていくも、それはただの「捕食本能」だと言われてしまう。決して叶うことのない恋のように思うも、レゴシは彼女への思いを信じて違わず行動していくのだった。
■人間の本性を動物によって見事に表現
肉食動物の狩猟本能を「恋愛」と置き換え、自分が好きな草食動物に本意を告げることができない。そんな「身分違いの恋」のような形に見えるが、人間でも「恋愛」を「狩猟本能」として見ることができる。動物の姿を取っていながらも、「BEASTARS」で描かれているのは間違いなく我々人間のことである。
本作ではこうした動物の習性・本性を人間の欲や感情に見事に置き換え、各キャラクターとして仕立てあげることに成功している。オオカミのレゴシだけでなく、彼が恋に落ちるウサギや動物たちのトップに立とうとするアカシカなど、多くの魅力的な登場人物が出てくる。動物好きはともかく、濃い人間賛歌の物語を見たい人には、ぜひ試してもらいたい漫画である。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る)