東証、売買審査業務の初期調査に人工知能を導入
2018年3月20日 17:38
日本取引所自主規制法人と東京証券取引所は19日、相場操縦行為等の不公正取引の調査を行う売買審査業務に人工知能(AI)を導入し、審査実務での利用を開始したと発表した。
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金融商品取引所には、上場する銘柄が売り買いの需給に基づいた適正な価格で取引される公正で信頼される市場をつくり、運営する使命がある。そのため、日本取引所自主規制法人は、相場操縦やインサイダー取引などの不公正取引が行われていないか監視している。
監視するのは売買審査担当者であり、経験とノウハウが必要。日々の数千万件の注文から、審査システムでの異常な株価の動き等を抽出し、1件ずつ取引の状態を確認。この状況に、証券市場の取引の増加が加わる。
証券の売買システムを稼働・リニューアル。発注環境は、コンピュータ上のツールやアルゴリズムが担うことが主流となる。結果、2012年の1,000万件の注文件数が、2017年には5,000万件に増加。2016年の大統領選挙でのピークは、9,500万件だ。
この注文件数の増加に関して、証券市場の不公正取引に該当する可能性のある取引での初動調査をAIが担当。審査担当者は、初動調査以降の詳細な調査・審査に注力する。初期段階をAIが担うことで、本格調査に多くの業務を割くことができ、効率化につなげる。
●導入したAI
今回導入したのは、NECの「NEC Advanced Analytics - RAPID機械学習」と日立の「Hitachi AI Technology/H」の2つ。実証実験成功から約1年間で、審査担当者の知見を2つのAIが学習。売買審査の初期段階の調査における売買執行形態の不自然さを見抜く。
2015年8月、AIの適用可能性を探る研究会を発足。
2015年9月、新売買システム。1日の発注可能件数2倍の2億7000万件に増加。
2016年4月、売買審査業務にNEC/日立の両社をAIベンダー選定、実証実験開始。
2017年2月、実証実験成功、対外的にAI適用をプレスリリース
2018年3月、人工知能を適用した売買審査業務の開始
●金融商品取引所(AIシステム)のテクノロジー
証券の売買システムのリニューアルでは、1日の注文件数や処理スピードが向上。そして、売買の判断をコンピュータ上のアルゴリズムが担う場面が急速に増加。注文件数の増加につながる。
審査の初期調査をAIが担うことで、この注文件数の増加においても、公正で信頼される市場を維持する。
今回の発表では、NECと日立のAIが審査担当者の知見を学習。つまり、学習機能を持つことがキーであろう。今後の注文はビックデータを活用したAIが担う時代に突入するのであろうか。そうであれば、新たな審査の知見をも学習するAIは必須であろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る)