富士通と理研、AIを融合したMI技術で全固体電池の電解質の組成を予測
2018年3月18日 22:06
材料シミュレーションと人工知能(AI)を組み合わせたマテリアルズ・インフォマティクス(MI)技術の有効性が、全固体電池の開発で実証された。
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富士通は16日、理化学研究所とともに、材料設計に第一原理計算とAI技術を組み合わせたMI技術で、高いイオン伝導率を実現するための全固体リチウムイオン電池用固体電解質の組成を予測し、実際に合成と評価実験を行って、これを実証したと発表した。
全固体リチウムイオン電池とは、現在主流のリチウムイオン電池の電解質を、可燃性のある液体から固体へと変えた二次電池だ。液漏れや発火の恐れがなくなり、安全性が向上。加えて、構造上高容量化も実現し、航続距離を延ばすことも可能となる。
自動車向け全固体電池は、トヨタ、ホンダ、独BMWなどが開発中であり、2020年代前半の実用化を目指す。またTDKや村田製作所も全固体電池を開発中であるが、用途はEV以外の領域だ。どちらにしても、その実用化には最適な材料の決定が必須だ。
今回の発表は、これら全固体電池を開発するメーカに、材料決定の仕組みとノウハウをセットで販売する狙いであろう。
●第一原理計算とAIを融合したMI
全固体リチウムイオン電池の材料開発は、研究者の長年にわたる経験や勘に頼らざるを得ない一方、材料の組成を指定して量子力学に基づいたシミュレーション(第一原理計算)で特性予測する。第一原理計算は、経験的パラメータを用いずに、原子の数と種類だけから物質・材料の様々な性質を計算できるが、非常に大きな計算負荷が課題だ。
今回活用したAIは、ベイズ推定法の考え方に基づき、観測事実からその原因である事象を確率的に推論する手法だ。第一計算原理とこのAIを組み合わせた。
MIは、材料シミュレーションなどの材料分野の技術に、AIなどを連携・融合させて材料探索を加速する取り組みだ。今回は、第一原理計算と確率推論AIを組み合わせ、計算時間を数十分の一に短縮。
●材料開発(富士通と理研、MI)のテクノロジー
富士通といえば、スーパーコンピュータの雄だ。その富士通がスーパーコンピュータに加え、AIを活用し、全固体電池の材料開発にMIを活用。その方法とノウハウは、全固体電池の材料開発を加速させる。
富士通研究所で実績のある全固体リチウムイオン電池における固体電解質の候補材料の一つで実証。3種類のリチウム含有酸素酸塩から合成される化合物にて、高いリチウムイオン伝導率を実現するための最適組成を現実的な時間内で予測することに成功(図中右側)。
予測された組成付近で最も高いリチウムイオン伝導率が実現されることを確認。つまり、容易には思いつかない組成や結晶構造をもつ高機能材料を、従来の数十分の一の計算時間で、予測できることを実証した。(記事:小池豊・記事一覧を見る)