クリント・イーストウッド監督作の中でも珠玉!「15時17分、パリ行き」の魅力

2018年3月18日 21:31

■2018年3月上映作の中でぜひ見て欲しい「15時17分、パリ行き」

 2018年も3月に入り、卒業シーズンを迎えている。さまざまな業務も移行期間に移り、4月に向けて忙しい時期になっているだろう。一方で、学生であれば春休みの期間でもある。

 その中でぜひ見てもらいたい映画がある。クリント・イーストウッド監督の最新作である「15時17分、パリ行き」だ。近年、実話を元にした映画を多く撮り続けているクリント・イーストウッドだが、本作ではさらに踏み込んで事件の当事者を主役として起用した意欲作だ。

■「15時17分、パリ行き」のあらすじ

 2015年8月21日。高速列車タリスがオランダのアムステルダムからフランスのパリへ向かう中、イスラム過激派の男が全身に銃を武装して無差別殺傷を試みる。しかし、その列車に乗り合わせていた米空軍兵のスペンサー・ストーンとオレゴン州兵のアレク・スカラトス、そして2人の友人である青年アンソニー・サドラーが連携プレーにより男を見事に取り押さえる。たまたま乗り合わせた青年たちがテロ事件を未然に防いだ本事件は世界にも知れ渡り、3人は英雄として称えられることになる。

 しかし、この3人の人生は至って普通だった。スペンサーとアレクは転校したミッション系の学校でアンソニーと出会う。3人は学校の雰囲気に馴染むことができず、校長に呼び出されることの多い問題児として見られていた。さらに、スペンサーとアレクは母子家庭ということもあり、周りからの評価も芳しくなかった。

 それでも3人は深い友情を結び、成長しても適度に連絡を取ったりあったりする仲になっていた。その中でスペンサーとアレクは軍人となる道を選び、特にスペンサーは誰かを救うことに命を懸けていた。しかし、彼が思うような軍人生活を送ることはできず、悶々とした日々を過ごしていた。

 その中で3人はヨーロッパへの旅行を決める。しかし、その旅行中にスペンサーとアレク、アンソニーの3人は偶然にもテロ事件に巻き込まれることになる。

■実話を体験した人間を主役として採用

 2015年にヨーロッパで起こった無差別テロ「タリス銃乱射事件」。凄惨な事件を未然に防いだのはごく普通の若者たちだったが、その行動力には多くの賞賛が届けられた。本映画でも幸せと呼ぶには難しい半生を送ったスペンサーを軸に物語が進み、その彼がテロを防ぐまでの道程は心が震えてしまう。

 また、本作では本職の俳優を使わず、実際に犯人を取り押さえた3人の若者を主演として起用。本人が体験した内容が中心なので無理のない映像となっており、素人を起用しながら映画として成立させている監督の手腕が見て取れる映画だ。

 何の変哲もない人間でも、愚直に努力をしていればいつかは報われる。3人の人生を映画にすることで、直に心にその言葉を刻まれるような作品。そんな心の奥底から奮い立たせるような映画となっているので、ぜひ鑑賞してもらいたい1本だ。

 「15時17分、パリ行き」は全国の劇場にて公開中。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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