NEC、高性能小型レーダ衛星が新燃岳撮影 溶岩流の溢れる瞬間を捉える
2018年3月14日 11:55
NECは13日、高性能小型レーダ衛星「ASNARO-2」が九州南部の霧島連山(新燃岳)の緊急テスト撮像に成功したと発表した。
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「ASNARO-2」は、経産省の助成事業で開発・製造した質量570キログラムの小型の地球観測衛星だ。イプシロンロケット3号機で1月18日に打ち上げ、高度約500キロメートル、地球1周約90分の軌道を飛行。
●雲や噴煙を透過して撮影
NECは2014年11月、光学センサーを搭載した小型衛星「ASNARO-1」を打ち上げた。分解能は0.5メートルと優れるが、光は雲や噴煙に遮られてしまう。
光の代わりに電波を用いると、雲や噴煙を透過した画像が得られる。
「ASNARO-2」は電波を用いた合成開口レーダを搭載。撮影した新燃岳火口周辺の写真には、噴煙は映っておらず、火口北西端から溶岩流がまさに溢れる瞬間を捉えている。
●「ASNARO-2」の特長
レーダ衛星は自ら電波を発射。地表で反射して戻る電波で画像を取得する。高精度の画像を得るためには、アンテナを大きくするか、コンピュータ処理で精度を高めるという。
衛星の大きさは打ち上げコストや運用コストに影響がある。「ASNARO-2」は小型衛星の実現のため小さなアンテナを採用し、受信データを地上のコンピュータで処理。仮想的に大きなアンテナで受信したのと同等の高精細画像を得る合成開口レーダという技術を採用。500キロメートル離れた宇宙空間から1メートルの物体を識別できる精度を実現した。
●レーダ衛星(NEC、「ASNARO-2」)のテクノロジー
高精細な画像を取得することに的を絞った設計思想であろう。例えば、広範囲を観測できる衛星と組み合わせることで、高精細な画像取得の威力が発揮される。なお、精細度を落とせば、広範囲を観測できるモードも搭載されているという。
「ASNARO-2」は、合成開口レーダのアンテナと太陽電池パドルからなるが、人工衛星には、電源、通信系、姿勢制御系、熱制御系などの必ず必要な機能があるという。それを衛星バスとして標準化・再利用してコスト削減を図った。
レーダによる地球観測には、火山活動や土砂崩れなどの自然災害の監視、鉱物資源の分布調査、海氷の観測などさまざまな用途が考えられる。4月からNEC衛星オペレーションセンターを中心に、「ASNARO-2」の取得画像をチューニングし、9月から画像販売を開始する予定だ。(記事:小池豊・記事一覧を見る)