完全養殖マグロ、大手が参入
2018年3月14日 10:29
クロマグロは、和食などで利用されることも多い高級食材のひとつだが、このクロマグロで問題視されているのが資源量の減少である。日本をはじめ多くの国々でクロマグロに対する「食料資源」としてのニーズが高まっていることが資源量の減少における大きな要因となっている。こうしたクロマグロの現状を受け、注目が集まっているのがクロマグロの養殖である。クロマグロの完全養殖は、2002年に近畿大学が世界で初めて成功させたことで話題となり、さらなる技術開発に期待が寄せられている。
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クロマグロの完全養殖とは、親魚の卵を人工的に孵化させて育てるという方式のこと。これまで養殖といえば天然の稚魚を育てるという手法が一般的なものだったが、この完全養殖の手法であれば天然の資源への影響が少ないという特徴がある。近畿大学の成功を受けて各企業もクロマグロの完全養殖をスタートさせ、マルハニチロ<1333>では2015年から養殖を行い現在は鹿児島県などに10ヶ所の養殖施設をもつ。
このクロマグロの養殖については決して近畿大学の中だけで済むという話ではなく、ビジネスチャンスと判断した他の水産大手もクロマグロの完全養殖に乗り出している。大手水産業者のひとつである、日本水産<1332>もそんなクロマグロの完全養殖に臨む企業であり、クロマグロの養殖ではイワシやアジといった専用のエサを利用することで天然に近い状態を保ちつつ、ビタミンなどの栄養価やうまみ成分についても十分に補うことができるマグロを育てている。クロマグロといえば、水揚げされる場所や時期などによって品質にばらつきが出てくるが、養殖であれば時期を問わずある程度の品質を維持することができるという点も大きなメリットとなっている。日本水産の養殖マグロは2018年度で全国のスーパーでおよそ350トンの出荷を目標としている。
このように各方面から行われているクロマグロの完全養殖だがそれでも食糧資源として天然由来のものを補うにはまだ十分とはいえない。日本で取り扱われているクロマグロは2016年度で4万7千トンという量だったものの、完全養殖の目標出荷量は1150トンとなっており全体の3%以下という数字である。完全養殖は卵から孵化した稚魚を育てることが大きなポイントとなるが、現在のところ孵化から40日後の生存率はおよそ3%という状態であり、こちらもまだまだ課題が多いのが現状である。完全養殖で出荷量を増やすには稚魚の生存率を高めるための取り組みが不可欠である。(編集担当:久保田雄城)