隠れた名作か!?邦画「散歩する侵略者」の魅力
2018年3月11日 17:42
■レンタル店などにひっそり置かれてある名作
休日にレンタル店や動画配信サイトを覗いてみると、知らないタイトルの映画が並んでいることがある。名前こそメディアで取り上げられていないものの、キャストや中身を見ると「なぜこれが世に知られていない」と思ってしまう映画が存在する。
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2018年に入ってレンタルが開始された「散歩する侵略者」も、そんな邦画の1本だと思う。2017年に公開された映画だが、この作品をフィーチャーしないのは惜しいことだと私は思ってしまう。
■「散歩する侵略者」とは
「散歩する侵略者」は2017年に公開された映画。元々は劇団イキウメが作った舞台作品で、後に小説も出版されている作品だ。後々になって各メディアとの連携を強めていった作品であることを見ると、それだけ魅力があるのは伝わってくる。また、第70回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品されており、世界21カ国で公開されている。
ある日、とある一家で残虐な殺人事件が発生する。その事件を追いかることになったジャーナリストの桜井(長谷川博己)は、その道中で天野(高杉真宙)に出会う。彼は生意気な口調で桜井に近づき、さらに自分は「概念を人から盗んでいる」と話し始める。
その一方、加瀬鳴海(長澤まさみ)は行方不明になった夫の真治(松田龍平)が見つかった知らせを病院からもらう。しかし真治は記憶の一切を失っており、そればかりか妙な言葉遣いや発言を繰り返し、まるで別人のようになっていた。
真治とはギクシャクしていたにも関わらず、まったくの別人になってしまった彼を放っておけない鳴海。その中で彼の奇行は止まる様子を見せず、挙句の果てには鳴海のクライアントである鈴木(光石研)の元までやってくる。そして真治は、鈴木から「仕事」という概念を奪い去り、まったくの別人のように変えてしまうのだった。
真治が鈴木にしたことを問い詰める鳴海。そして、真治は天野と同じように「人から概念を盗んでいる」と言い出す。しまいには「俺は宇宙からきた侵略者だ」と言い出す。呆れ果てる鳴海だが、天野や他の宇宙人の行動はエスカレートしていた。
■固いキャスト・演出・脚本と隙ナシの映画
舞台作品ということもあり、「概念」という確かな支柱に支えられた上質な設定となっている本作。しかし、映画ではそれが説教臭くなることなく、音楽面などの演出もあって真治や天野と人間のやり取りがコミカルに見えたり、異質な恐怖体験に見えたりする。
さらに、ラストは宇宙人によって地球が滅亡しかけるのだが、そのシーンもしっかりと映している。そのシーンを映した上で地球が意外な方法で救われる展開に流れ込み、最後まで目を離せない映画だ。
キャストも松田龍平や長澤まさみ、長谷川博己、さらに若手の注目役者も出演していたりと、本当の映画ファンにはたまらない作品となっている。最近の邦画に飽き飽きしている人には、ぜひチェックしていただきたい。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る)