北極圏ツンドラ域の夏季温暖化を日本の海洋研究開発機構が解明
2018年3月10日 07:51
北極圏のツンドラ域の夏季温暖化が、年平均気温の温暖化の兆候がないにもかかわらず、進行していることを、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が発表した。
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北極環境変動総合研究センターの鈴木和良主任技術研究員らの研究グループは、北極圏の約8割を占めるツンドラ域の衛星観測データと陸面再解析データの統計解析を行った。
すると、夏の気温が15年間で約2度上昇していることが判明。それに対して年平均気温には温暖化の兆候が見られないため、北極周辺に「夏季温暖化」が進行をしていることが初めて示されたのである。
また、温暖化にともない北極ツンドラ域の蒸発散量が増加、過去15年間で水の高さにして2cm(約1,106億t)乾燥化が起こっていることも、併せて明らかになった。北極ツンドラ域の乾燥化は、大半を占める湿地面積の地表温度を上昇させ、さらに温暖化を加速させると考えられている。
研究グループは北極の3大河川(レナ川・マッケンジー川・ユーコン川)流域の水循環についても調査を行った。永久凍土の減少が著しいユーコン川では、陸水貯留量の減少、逆に地下水流の増加が示された。
永久凍土が比較的安定している他の川ではそれらの傾向が見られないことから、永久凍土の存在が水循環や温暖化の加速を緩和している要因の一つになっていることも発見した。
北極圏の夏季温暖化は、永久凍土の融解を加速させ、地中に閉じ込められた温室効果ガスを放出させることで、地球温暖化を加速させると考えられている。
今回の研究により「北極圏の夏季の温暖化」が進行していることを初めて明らかにした。『北極域の温暖化と水循環研究に新たな知見を加えるとともに、地球規模の温暖化の理解や河川や陸面過程を通した水・物質循環の理解に貢献するものである』と発表では述べている。
今後は、『北極ツンドラ域を含む北極圏の温暖化メカニズムをより詳細に分析』することに加え、『湿地や湖沼、植生の影響についても評価』するという。また、『北極永久凍土帯での水と炭素循環の理解に向けて、詳細な水文気候データセット構築に向けた技術開発を行っていく』としている。(記事:和田光生・記事一覧を見る)