東芝、自動運転システム向け長距離LiDARの回路技術を開発
2018年3月7日 07:29
東芝は5日、レーザの照射により、離れた物体までの距離情報を3D画像として得る技術「LiDAR」において、世界最高となる200メートルの長距離測定性能と高解像を実現する、車載用LiDAR向けの計測回路技術を開発したと発表した。
【こちらも】トヨタが採用したのはスタートアップ企業の「高性能センサー」
LiDARは自動運転には欠かせない技術と考えられている。対象物までの距離の測定に加えて、物体検知ができることが特徴だ。日本国内だけでも、リコー、パイオニア、パナソニックなど実用化に向けて開発を進めているが、そこへ東芝が加わることになる。
従来の車載用LiDARと比較して測定可能距離を2倍の200メートルまで伸ばし、それを1チップの回路で実現。フラッシュメモリ以外でも半導体技術を持つ東芝が、小型化・低価格化・高性能化を目指す構図だ。
測定可能距離が2倍になれば、高速道路走行中での車両や障害物の早期検知に繋がるだけでなく、市街地走行中における歩行者の見落とし低減につながる。さらなる測定距離の延伸および精度向上等についての研究開発を進め、2020年度までに実用化技術の確立を目指すという。
本技術の詳細は、米国サンフランシスコで開催された半導体回路国際会議ISSCC 2018(2月11日~15日)にて発表した。
●長距離LiDARの回路技術の特長
LiDAR実現で課題になるのは、短距離と長距離の測定方法が異なることだ。
長距離を測定するには、微弱なレーザの反射光をADC回路(アナログ-デジタル変換器)で検知するが、検出時の雑音低減には平均化処理が有効である。ところが、近距離を測定には、ADC回路は課題があり、近距離用の独自な回路を開発。
短距離用の回路と長距離用のADC回路の2つで構成する独自のハイブリッド回路を開発。そして、ADC回路に要求される処理速度を緩和し長距離測定を可能にする一方、各レーザが反射した物体が同じ物かどうかを判別。同じ物体のみを選択して平均化処理を行うことで、小さな物体をも検知できる高解像度を実現した。
●LiDAR(東芝、長距離と短距離用のハイブリッド回路)のテクノロジー
チップ写真を見て欲しい。長距離用の回路と短距離用の回路、及びデジタル回路が1チップに搭載されている。少なくとも3チップ以上の回路を1チップ化したことになる。これにより、小型化を達成。
長距離用には高い周波数で動作するADC回路を採用、短距離用には高い周波数動作が不要なTDC(時間分解能型)回路を採用したと推定できる。この2つをハイブリット化したことで、トータルの消費電力を削減。200メートルの長距離を測定できる性能で、低消費電力化も実現した。(記事:小池豊・記事一覧を見る)