日本の役者界を支え続けた大杉漣、最後まで役者人生を貫く
2018年2月26日 21:13
■ベテラン俳優の大杉漣氏が逝去
2018年2月21日、俳優・大杉漣氏の突然の訃報が各メディアを通して流された。舞台や映画、ドラマに止まらず多くのバラエティ番組にも出演しており、お茶の間でも非常に慕われていた人物だ。そんな彼の訃報に、芸能界だけでなく多くの人が衝撃を受けた。
■多くの役を演じ続けた大杉漣氏
大杉漣氏は徳島県出身で、1970年代に活躍していた蜷川幸雄や寺川修司に感銘を受け演劇に通い始める。その後は自分も役者になることを志し、太田の劇団員募集に応募して研修生として採用されることになる。
舞台での役者経験を武器に、1980年代には映画の端役を中心として下積み時代がはじまる。はじめはロマンポルノやVシネマなどへの出演が多かったが、しばらくは華が開くことはなかった。
それでも役者人生を続けた大杉氏だが、40歳になり北野武の作品「ソナチネ」に出演。この映画での演技が高い評価を受け、一気に知名度を獲得することになる。「ソナチネ」以降は大谷健太郎監督の「アベックモンマリ」、崔洋一監督の「犬、走る DOG RACE」などでも実力を発揮し、数々の助演男優賞を獲得するに至った。
爆発的に実力を開花した大杉氏は、これ以降は役に捉われず様々な人間を演じることになる。やくざだけでなく公務員や刑事、サラリーマン、ホームレス、学校の先生など、彼に掛かれば演じられない役はないほどにレパートリーは豊富。そんな彼は一時期「300の顔を持つ男」などと評され、日本の映像界には欠かせない人物となっていった。
個人的に印象的なのが、2004年に放送された「僕と彼女と彼女の生きる道」の小柳義郎役だろうか。定年間近のサラリーマン役だったが、家と会社のどちらでも孤独が付き待っている人間を見事に演じていた。あの哀愁をテレビ越しに伝えられるのは、やはり大杉氏でなければできなかったと思ってしまう。
■「バイプレイヤーズ」、「ぐるナイ」は撮影分まで放送
大杉氏の死はあまりにも突然だった。現在も、「バイプレイヤーズ」や「ぐるナイ」の撮影に参加していた。
「バイプレイヤーズ」は大杉氏をはじめ遠藤憲一、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研といった名バイプレイヤーズが集結したドラマ。第1期が好評を受け、2018年には2期がスタートしていた。その中での突然の訃報に、共演者だけでなくスタッフ一同も各メディアで大杉氏にコメントを残している。こちらは残りの4話、5話は撮影途中であるも、大杉氏の意をくんで最後まで撮影を続けることが発表された。
また、「ぐるナイ」内の企画である「ゴチバトル」にもレギュラーとして参加していた。こちらも撮影されていた2月22日分は放送。番組は、大杉氏へのコメントと共にスタートし、視聴率は通常を記録した。
多くの人から愛されていたことがわかる大杉漣氏。これから彼の演技を見られないのは残念だが、ご冥福をお祈りするばかりだ。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る)