官民連携実る 次世代の製鉄技術でCO2排出量30%減を実証
2018年2月25日 17:36
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は23日、神戸製鋼所、JFEスチール、新日鐵住金、新日鉄住金エンジニアリング、日新製鋼とともに、2016年度に新日鐵住金の君津製鐵所構内に建設した世界最大規模の試験高炉(容積12立方メートル)において、CO2排出低減効果の検証試験を完了したと発表した。
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産業界で最大のCO2を排出する鉄鋼業。日本の鉄鋼生産のエネルギー効率は世界一といわれるが、そのCO2排出量は日本の全排出量の14%を占める1.8億トンだ。
さらなるCO2排出量削減には、現状の製鉄プロセスを抜本的に見直した、革新的な技術開発が必要だ。その要はCO2排出量削減技術とCO2分離・回収技術。官民挙げての技術開発のキックオフは2008年。2030年にはCO2排出量を30%削減できる高炉の実用化に漕ぎ着ける計画だ。
●CO2排出量の30%削減へのロードマップ
製鉄所からのCO2排出量を約30%削減する技術の確立は、半世紀に亘るロードマップだ。
フェーズIステップ1(2008~2012年度)で要素技術を開発し、ステップ2(2013~2017年度)で世界最大規模の試験高炉を建設。実高炉の数百分の1の規模だ。この高炉を4回試験操業して、技術を実証した。
実証した技術は2つだ。水素を鉄鉱石の還元材としコークス使用量を削減。高炉からのCO2排出量を削減する技術に加えて、高炉ガスからCO2を分離・回収する技術だ。
フェーズIIステップ1は、2030年頃までに高炉からのCO2排出量を約30%削減する技術確立と実機1号機の実用化、ステップ2は、2050年までの普及を目指す。
●CO2排出量削減(官民連携、製鉄業)のテクノロジー
鉄鉱石から鉄を精錬するにはコークスを使用。高炉ではコークスの炭素(C)が鉄鉱石の酸素(O)を奪い還元しCO2が発生する。この原理では、鉄の生産量に比例したCO2の増加は避けられない。
水素をコークスの一部代替として鉄鉱石を還元する技術を実証したのだ。加えて、1トン当たりのCO2の分離・回収コストを2,000円以下にする目標を十分に達成できる見込みという。このCO2排出量削減技術とCO2分離・回収技術を融合した新たなプロセスを図2に示す。
日本の製鉄の効率や品質は世界をリードする。脱炭素化の流れは今後も続くが、その実現には地道な技術の積み重ねが必要だ。半世紀に亘る研究開発は製鉄業の体力を消耗させる一方、新たな製鉄技術の世界的な普及が必須だ。世界的な産官学の連携も視野に入れた戦略も見据えているのであろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る)