世界初、トヨタが電動車用の新型磁石を開発 貴重なレアアースを大幅削減
2018年2月21日 17:48
トヨタは20日、電動車のモーターに使われるネオジム磁石を改良した「省ネオジム耐熱磁石」を世界で初めて開発したと発表。希少で価格が高いレアアースの使用量を削減し、より安価なレアアースに置き換えたうえで従来と同等クラスの性能をもつ磁石をつくり出した。
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レアアースとはランタンやセリウム、ネオジム、テルビウム、ディスプロシウムなど性質の似た元素17種類の総称だ。これまでのネオジム磁石に使われてきたテルビウム、ディスプロシウムは特に希少かつ高価で、ネオジムはそれより産出量は豊富だが、将来ハイブリッド車や電気自動車など電動車の普及が進んだ場合、足りなくなる心配があった。
もとよりレアアースは様々な材料に用いられる非常に重要な元素で、日本における需要は非常に高い。しかし、その大部分を中国からの輸入に頼っているため、政治的なリスクを考慮すると安定供給は難しい状況にある。
それらの問題を解決すべく、トヨタは希少かつ高価なレアアースに換えて安価で量が豊富なレアアースを活用しようと研究を進めていたが、この度それが実現した。新たに開発された省ネオジム耐熱磁石はテルビウムやディスプロシウムを使用しないだけでなく、ネオジムを最大で50%削減できる。
電動車用モーターなどには高温環境でも使用できる高い耐熱性と強い磁力が求められ、ネオジムはその性能保持にあたって大きな役割を占める。しかし、磁力と耐熱性の悪化を抑えられる新技術を採用したことで、ネオジムが担っていた部分をより安価なランタンとセリウムに置き換えられるようになった。
さらに、この新型磁石は電動車のみならず、ロボットや多様な家電製品への応用も期待されている。また貴重なレアアースの需給バランス維持、価格などのリスク低減にも寄与する見込みだ。
モーター、インバーター、バッテリーといった要素技術の研究開発は地味ながらも、電動車にとっては必要不可欠な技術を生む取り組みである。トヨタは今後も電動車の普及を見据え、その基盤整備を進めていくという。(記事:小椋恒示・記事一覧を見る)