胎児期から乳児期にかけての飢餓は遺伝子に記録され成人期の肥満に関連する

2018年2月15日 22:51

 Developmental Origins of Health and Disease(DOHaD)仮説。胎児期から乳児期にかけての栄養状態は、将来的な肥満の生じやすさ、2型糖尿病の発生などに関連している。経験的には古くから知られていた知見であるが、具体的にどういう仕組みでそうなるのか、科学的な根拠は実際にあるのかは不透明であった。

【こちらも】肥満者を批判しても彼らはダイエットを始めない、米研究

 それを今回、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子細胞代謝学分野および九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野(第三内科)の小川佳宏教授と東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科メタボ先制医療講座の橋本貢士寄附講座准教授の研究グループ、そして筑波大学医学医療系の島野仁教授ら、森永乳業による研究グループが明らかにした。

 DOHaDは本来、病的なものではなく、先史時代の人類において、栄養素の体内維持をより安定的にするための防御的メカニズムであったのであろうと推論はできる。しかし今日では、肥満や糖尿病は本人にとっても社会全体にとっても有害であるので、この機序が発生することを防止し、具体的には妊娠期の栄養不足などを生じさせないでおく必要がある(なお、過栄養状態においてもDOHaDは発生する)。

 そのためにはまず前提として、DOHaDの機序そのものを解明しなければならなかったわけであるが、今回、マウスの肝臓に着目した研究において、糖脂質代謝改善作用を有する Fibroblast growth factor 21(FGF21)の遺伝子が、DNA脱メチル化を受けることによって、これが長期的に記憶されることが分かった。

 端的に言えば、このFGF21遺伝子の脱メチル化の有無が、直接的にDOHaDと関連しているようである。ちなみに脱メチル化をされていない状態がDOHaDの発生する状態であり、これは成人期になってからでは変異しないことが明らかになっている。

 研究の詳細はNature Communicationsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

関連記事

最新記事