難病・アレキサンダー病の原因分子を発見、山梨大などの研究
2018年2月14日 11:00
山梨大学、慶応大学、京都府立医科大学、理化学研究所からなる共同研究グループは、マウスを用いた実験によって、非常に稀な難病であるアレキサンダー病が、アストロサイトと呼ばれる脳細胞のCa2+シグナル興奮性が高くなることによって引き起こされていることを明らかにした。研究では、この興奮性がAxCaと名付けられている。
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アレキサンダー病は神経変性疾患である。日本全体で推定患者総数がおよそ50人という非常に稀な病気であり、日本では指定難病131の認定を受けている。ちなみにアレキサンダー病という名前は、1949年にこの疾患を始めて報告したAlexander WSに由来する。
乳幼児期に発症し、頭囲拡大、精神運動発達の遅れを主な症状とし、患者は10歳まで生きることもできない、生命予後の極めて悪い疾患であると考えられていた。その上、過去においては診断するすべすらなく、死後に脳の病理組織を確認することで初めて確定診断が付けられる、というような有様であった。
2001年、はじめて「この病気の患者の90%以上がGFAP遺伝子の異常を持つ」ということが発見され、以後、遺伝子検査による診断は可能になると同時に、実は成人期以降に発症して進行のゆるやかなアレキサンダー病も存在することが明らかになった。
今日では「大脳優位型」と「延髄・脊髄優位型」、そしてその中間型に分類されており、また、MRIと遺伝子診断による診断方法は確立されている。
さて、肝心の治療法であるが、現状では存在しない。一部の症状に対して対症療法的な治療があるのみである。だが、今回の発見によって、病態の解明がさらに進むとともに、これをターゲットとした治療手段が何らかの形で模索できるのではないかと期待できるところである。
なお、研究の詳細はアメリカの科学誌GLIAのオンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)