ブドウの木、予想以上に干ばつに強いことが判明
2018年2月8日 12:42
●予想以上に強靱であったブドウの木
フランスのボルドーとカリフォルニアのナパ・ヴァリーで栽培されているブドウの木は、干ばつに対して予想以上に抵抗力があることが判明した。この結果は、地球温暖化が農作物に与える影響を懸念していた農学者たちには朗報である。また、将来の灌漑管理に向けても指針となると期待されている。
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●ワイン愛好者にも吉報となる研究結果
ワイン醸造者や、世界中のワイン愛好者にとっても喜ばしいニュースである。
フランスのボルドー・ブドウ・ワイン科学研究所(ISVV)のギョーム・シャリエール率いる国際研究チームの調査結果は、科学雑誌「Science Advances 」に掲載されている。これまでは、地球の温暖化がもたらす干ばつにブドウの木がどこまで耐えうるのか、関係者のあいだで憂慮されてきた。研究結果では、ブドウの木は予想以上に乾燥に強いことが報告されている。
●関係者が頭を悩ます灌漑管理の必要性
ブドウの栽培は、経済的にも大きな影響力を持っている。一方で、ブドウは気象条件に左右されやすい脆弱な樹木でもある。すでに近年、カリフォルニアをはじめとする各地で起こっている干ばつは、ブドウの木に大きな被害を与えることが予想されていた。
そのため、ブドウの生存と生産性を維持するために最重要課題となる水の管理についても、関係者のあいだでは長らく議論がなされてきた。
農業用の淡水資源の消費は、乾燥地帯では甚大なものになる。たとえば、カリフォルニア州では淡水資源の80%が農業用として消費されているともいわれている。
同時に、研究者たちは水不足によるストレスがブドウの木に与える影響も、科学的に調査を進めた。水不足が、品質や生産量に与える影響を客観的に調査したのである。
●ブドウの葉にある気孔の働き
長期的な干ばつによる水不足のストレスから、ブドウはどのように生き残ろうとしたのか。
シャリエール教授らは、さまざまなブドウの品種の葉およびその気孔について詳細に研究を行った。
屋外屋内のブドウの木を10年以上にわたって観察した結果、気泡が原因で気孔の水分調節や水の輸送がブロックされる現象は、あらゆるブドウの品種に共通することがあきらかになった。
しかし、最も重要なデータは、水不足のストレスが増加するにつれてエンボリズム(塞栓症)に対するブドウの脆弱性は大きく減少することであった。
●干ばつによってブドウの木が死滅する可能性は低い
つまり、干ばつに起因するエンボリズムの発生は非常にまれなことであるといえる。
研究チームは、調査を行ったブドウの木に関していえば、土壌がどれほど乾燥してもブドウの木の水分輸送システムは一度も変質せず、木自体が死滅する危険にさらされた例もなかったと報告している。
●過剰な灌漑施設も必要がない
さらに研究チームは、ブドウの木の強靱さが今回の調査で判明した以上、莫大な資金を要する灌漑施設を設ける必要もないとしている。この点においても、世界中のブドウ生産者にとっては朗報というべき研究結果となった。