【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆掃黒除悪の波紋◆
2018年2月4日 09:50
*09:50JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆掃黒除悪の波紋◆
〇習近平のマフィア一掃宣言〇
27日付時事通信は、中国・習近平国家主席が11日に開かれた 党中央規律検査委員会の会議で「掃黒除悪」(黒社会と呼ば れるマフィアの一掃と悪の排除)の檄を飛ばしたと伝えた。 黒社会だけでなく、不正に手を貸す党末端組織幹部も厳しく 取り締まる方針。党幹部の腐敗追及の裾野を広げると同時に、 麻薬、売春、賭博、マルチ商法、誘拐、武器密売などの犯罪 組織を壊滅し、民衆の支持を広げる狙いとされる。
代表的事例は14年3月に逮捕された四川省大物実業家・劉漢。後 ろ盾だった周永康の失脚に伴うものだったが、同省の政治協商会 議の常務委員だった。凶悪犯罪に関与し、公安関係を買収し、地 下武装組織を持ち、地域利権を独占していたとされる。
16年4月号のSAPIOによると、70年代末からの改革開放で増殖し 始めた黒社会は100~150万人の規模。共産党に潰されないよう小 集団で乱立し、反社会性が強いとされる。黒社会のボスの約4割は 不動産業界と関り、約2割は政治家になっている。
北朝鮮ビジネスとの繋がりも憶測され、27日のラジオ自由アジアは 金正恩委員長の秘密資金が枯渇しかけていると伝えた。朝鮮労働党 「39号室」が麻薬製造、通貨偽造などで年5~10億ドル稼いでいた とされる。中国側からの実質的な経済制裁となろう。
26日に東京で、中国窃盗団「ピンクパンダ」7名が逮捕された。数年 前から毎年のように逮捕されているが、中国国内の締め付け強化で、 日本を含むアジアへ犯罪集団が拡散する恐れがある。「一帯一路」の 波に乗り易い。中国国内では不動産市場の混乱が要注意か。北京市が 環境対策を理由に製造業500社を追い出し、温床になるスラム街一掃 も行っている。出稼ぎ労働者を追い出す荒療治では人権も何もない。
政治的には、一斉に王岐山氏「定年引退せず」が報じられた。全人代 での副主席就任が噂される。既に、経済担当副首相に腹心の劉鶴氏を 指名する見通しと伝えられた。国営企業改革などの旗を振って来たが、 金融問題全体も統括すると言う。
河野外相と会談した李克強首相は穏和に見えた。昨秋の共産党大会で 内政の実権を剥奪されたとの見方と符合する。習氏側近の重用はそれ を裏付ける。
昨年のGDPが発表されたばかりだが、経済統計の「虚偽」を認める報道 も相次いでいる。揺れ動く中国の動静を注視することになろう。
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出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/1/30号)《CS》