高血糖を改善する匂い物質、新しい糖尿病治療薬へ 東北大学の研究
2018年1月31日 14:42
東北大学と大阪大学の共同研究グループは、「匂い」によって膵臓の機能を回復させ糖尿病の治療に繋げる新たなるアプローチを発見した。まったく新しい糖尿病治療薬として利用できるのではないかと期待されている。
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匂い物質が効果を持つ、とはいっても、匂いを嗅がせると効くという話ではない。少なくとも今回の研究における実験においては物質の経口投与によって実験が行われている。
さて、ヒトの鼻の嗅覚神経には「嗅覚受容体」がある。それと同じものが、膵臓のインスリン分泌細胞(β細胞)にも存在していたことが今回の研究で分かった。そして、オクタン酸という匂い物質がこの膵臓にあるβ細胞の嗅覚受容体・Olfr15によって感知された際、血糖値が高い場合にのみ限って、インスリンの分泌を促進し血糖値を改善することが明らかになったのである。
今回の研究そのものはマウスで行われた(ただし同様の嗅覚受容体はヒトにもマウスにも共通して存在する)。膵臓における嗅覚受容体はOlfr15だけではなく他にもあるらしいが、今回の研究はさしあたってこれに着目して行われた。さまざまな検証の結果、上記のような性質をOlfr15が持つことが明らかになったというわけだ。
糖尿病の原因はいろいろあるのだが(大雑把にいえば膵臓の病気である、というのは確かなのだが)、特にアジア系のヒトにおいてはインスリン分泌の低下がトリガーである場合が多いという。従って今回の発見は、低血糖症を引き起こすことのない安全な糖尿病治療薬の開発につながる可能性が期待されるのである。
なお本研究の詳細はOlfactory receptors are expressed in pancreatic β-cells and promote glucose-stimulated insulin secretionと題された論文にまとめられ、Scientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)