AIスピーカーは超音波で乗っ取れることを証明! 第三者による悪用を懸念
2018年1月30日 11:35
音声を超音波に変換してAIスピーカーに命令を出すと、周囲に気づかれることなく、離れた場所から第三者が操作することができる。それを証明したのが、早稲田大学森達哉准教授の研究グループである。
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研究グループは、音声を超音波に変換するパラメトリックス・スピーカーを使って、離れた場所からAIスピーカーに命令を出す実験を行った。その結果、周囲には何も聞こえない状況にもかかわらず、AIスピーカーは音声を認識し、スケジュールを読み上げるなどの動作を行ったのである。こうした動作は複数のメーカーが発売しているAIスピーカーで確認された。
ただし、今回の実験では
「攻撃者の存在が気づかれないこと」
「攻撃者とAIスピーカーの間に障害物がないこと」
「AIスピーカーの設定として、話者認識がONになっていないこと」
と複数の条件成立が必要であり、今すぐただちに脅威になるものではない、と研究グループのサイトでも明記されている。
家庭用AIスピーカーはすでにCMなどで御馴染みの人も多いだろうが、話しかけるだけでAIスピーカーが連動している家電などの操作をしてくれるものである。
家電側にも連動できる機能を備えている必要はあるが、専門家によっては「AIスピーカーは現在のようなアシスタント的な役割ではなく、コントロール端末そのものに変わる」と断言する者もいる。
実際、家庭用AIスピーカーは世界的に普及の兆しを見せており、米国ではすでに800万世帯で利用されている。全世界的に見ても累計販売代数は3300万台以上。新商品の開発・発表も行われていて、その勢いは止まるところを知らない。
日本でもGoogleやLINEなどが発売しており、大手企業の参入も相次いでいることから、普及が見込まれる分野であることは間違いないだろう。
研究グループによると、今回の実験ではわかりやすい例としてAIスピーカーをとりあげたのであって、音声認識装置全般が標的に成り得るとも警告している。
また研究の狙いは、「潜在的な脅威の実現性を定量的、かつ科学的に再現性のある方法で評価」することにより、「関連する開発者や研究者等に注意喚起を促」し、「有効な対策技術の開発につなげていくこと」としており、『攻撃者視点』での研究を今後も進めていくという。(記事:和田光生・記事一覧を見る)