三菱重工業の憂鬱 需要減退が進む石炭火力発電とMRJ40機キャンセル

2018年1月29日 17:15

 世界的な石炭火力発電の需要減退が鮮明になって来た。「パリ協定」による温暖化対策の国際的な枠組みが16年11月に発効したのに続いて、17年11月には第23回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)が開催され、温暖化ガスの排出が特に大きな石炭火力への依存割合を減少させる取り組みが、世界的に進んでいる。

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 自然エネルギー財団によると、ヨーロッパの主要15カ国における総発電量中の再生可能エネルギー割合は16年に34%を占めるまで上昇した。市場の拡大はスケールメリットへとつながり、再生可能エネルギーの発電コストも低下している。石炭火力発電以上の価格競争力を持つ太陽光発電や風力発電も見られるようになった。

 こうした傾向は設備投資額に如実に反映され、国際エネルギー機関(IEA)のまとめによると、16年の世界における電力関係投資は再生可能エネルギーが30兆円以上に上ったのに対して、火力・原子力は14兆円と1/2以下に止まった。

 大型ガスタービンの世界における需要は、独シーメンスによると年間110基程度だが、世界の生産能力は4倍に及ぶ年400基にもなり、供給能力が過剰であることは明らかだ。重電メーカーは過剰な在庫と供給の過多を解消することが急務だ。現状のままでは生き残りそのものが難しい。

 世界的な環境の急変に対応して、独シーメンスは17年11月に7千人弱の人員削減を発表、米ゼネラル・エレクトリック(GE)も12月に1万2千人という大規模なリストラを発表した。14年に三菱重工と日立の火力発電事業を統合した三菱日立は、石炭火力を中心とするドイツで人員を削減し、国内では高砂工場(兵庫県高砂市)を中心とする拠点従業員の配置転換などを進める。三菱重工業はパワー部門(発電所向け)の売上高2兆円を掲げていたが、火力発電機器の生産体制を縮小してこの目標を取り下げた。18年3月期の受注高は前期比2割減の1兆4,500億円の見通しとなり、5,500億円の引き下げとなる。

 豪華客船による巨額損失計上や、納入延期を再三繰り返しているMRJ、南アでの大規模な火力発電所向けボイラー建設での協業先の日立との深刻な対立など、懸念材料を抱えていても、三菱重工業にはパワー部門という頼りになる大黒柱があった。17年3月期にはパワー部門が営業利益の7割を稼いだ。しかし、マーケットの環境は悪化し、ライバルの安値攻勢による採算の低下で営業利益は、当初想定の3分の2の1千億円にとどまるとみている。そこにMRJ40機のキャンセル情報が飛び込んできた。三菱重工業は底なしの憂鬱の中にある。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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