東レ、「革新と攻めの経営」で成長戦略を推進

2018年1月23日 12:18

 東レは16日、スエード調人工皮革の国内生産設備能力を1.6倍に拡大すると発表した。

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 この人工皮革は、従来のファッション、インテリアに加え高級車の内装用途で急速に需要が拡大しており、さらに航空機内装やコンシューマーエレクトロニクス分野など新たな用途の需要も増加するなど、今後も年率約7%の成長が予測されている。

 2019年度にも生産能力の不足が予測されるため、滋賀事業場と岐阜工場において、生産設備の新設・高度化による生産体制の増強を進め、2019年9月での稼働開始を予定している。

 繊維から始まって、樹脂・フィルム・ケミカル・電子材料などの機能化成品事業、航空機・自動車産業・スポーツ用途など幅広く使われる炭素繊維複合材料事業、医薬・医療を中心とするライフサイエンス事業など幅広い分野に展開してきた東レの動きを見ていこう。

■前期(2017年3月期)実績と今期(2018年3月期)見通し

 前期売上高は2兆265億円(前年比96%)、営業利益は前年に比較して76億円減の1,469億円(同95%)であった。

 営業利益減の主な要因としては、販売数量増による207億円、原燃料価格下落159億円などによる増益要因396億円に対し、製品販売価格下落318億円、海外比率52%の中急激な円高(1ドル120円->108円、1ユーロ133円->119円)による海外子会社円換算差106億円などの減益要因472億円によるものである。

 今期売上高は2兆2,200億円(同110%)、営業利益は1,650億円(同112%)を見込んでいる。

■「革新と攻めの経営」で成長を目指す中期経営課題プロジェクト

 「革新と攻めを推進する」ため次の3重点戦略により、2020年3月期目標売上高2兆7,000億円(対前期比133%)、営業利益2,500億円(同170%)を目指す。

 1.成長分野での事業拡大

 ・グリーンイノベーション事業(環境問題解決の革新)~年率11%拡大
 炭素繊維複合材料: 機体軽量化のためボーイング社航空機向け、トヨタとホンダの燃料電池車向け、風力発電翼向け、リチウムイオン電池用セパレータを拡大。
 水処理用膜: 水道設備用と家庭浄水器用拡販

 ・ライフイノベーション事業(医療の革新)~年率10%拡大
 先端材料: 生体信号検知機能素材、衛生材料用PPスパンボンド、検体の遺伝子発現量の変化を解析するDNAチップなどを展開。
 医薬と医療機器: 透析装置、人工腎臓、コンタクトレンズ、医薬品を強化。

 2.グローバルな事業の拡大と高度化~年率12%拡大
 ・米国と欧州: 自動車とエネルギー分野で先端ニーズへの対応。
 ・中国と新興国: 社会生活の高度化、環境規制強化への対応。

 3.競争力強化~今後3年間で2,200億円のコスト削減
 ・トータルコストダウン: グループ横断で比例費削減、固定費管理の徹底、生産プロセス革新の推進。
 ・事業体質強化: 不採算事業の収益改善、撤退、縮小の実行。
 ・営業力強化: 生産、技術、研究、社外パートナーと連携して「儲ける仕組み」作り。

 Chemistry(化学)を核に技術革新を追求し、「先端技術で世界のトップ企業を目指す」東レの成長と革新を見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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