東京工業大など、卵の白身から高強度ゲル材料を開発 医療用素材などに期待
2018年1月22日 20:22
鶏卵の白身に含まれるたんぱく質から高強度ゲル素材『卵白たんぱく質凝縮体ゲル』を開発することに、東京工業大学などの研究グループが成功した。
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強度はゆで卵の白身の150倍以上。卵白のタンパク質を一定間隔に集積させ、加熱することで可能になるという。
金属やセラミックなどに代わる次世代の材料として、生体高分子であるタンパク質の活用が進められている。しかし、従来の方法だと時間も費用もかかるため、研究グループは鶏卵に注目した。
鶏卵なら大量生産がすでに可能な状態であり、安価に入手可能である。鶏卵の白身を加熱すると固まるという、誰もが知っている現象(加熱ゲル化現象)を応用することで、新たな素材を開発できるのではないかと考えたのである。もちろん、加熱してゲル化した卵白の強度は低いため、そのまま材料として使用することはできない。
すでに研究グループは、タンパク質にイオン性海面活性剤を加えることで、水中のタンパク質を一瞬で凝縮させ、一定の間隔に集積させる技術を開発していた。
そこで鶏卵の卵白に水と陰イオン性海面活性剤と陽イオン性海面活性剤を一定の割合で加えると、タンパク質が一定の間隔で集積していることを突き止めた。
次に70度で加熱し、白く固まったところで内部を分析すると、80%の水を含むハイドロゲルであることが確認された(卵白たんぱく質凝縮体ゲル)。そして、タンパク質によってネットワーク構造が形成された生分解性物質であることも確認された。
続いて、卵白たんぱく質凝縮体ゲルの強度を解析。荷重をかけると17分の1の厚みに薄くつぶれるほどの柔らかさを持ちつつも、通常のゆで卵の白身の150倍以上の強度を示した(通常のゆで卵の白身の圧縮強度は0.2メガパスカル程度だが、解析した卵白たんぱく質凝縮体ゲルの圧縮強度は最大34.5メガパスカルだった)。
最後に卵白たんぱく質凝縮体ゲル内部のネットワーク構造を分析すると、変性したたんぱく質同士の共有結合ネットワーク(ジスルフィド結合)と、疎水相互作用による非共有結合ネットワークという2種類の性質の異なるネットワーク構造が形成されていた。
これらのネットワークはゆで卵の白身でも形成されるが、均一に形成されている点が違っており、それが高い強度を示す要因になっていると考えられるのである。
今回の研究・開発により、卵白のタンパク質から高強度材料が作製できることが判明した。今後、研究グループは体内に残留せず、一定期間後に体内に吸収されるような医療用素材などの開発を進めていくという。(記事:和田光生・記事一覧を見る)