帝人と関大、ファッション性を兼ね備えた生体認証センサーを開発

2018年1月22日 18:19

 関西大学システム理工学部の田實佳郎教授と帝人フロンティアは16日、組紐状のウェアラブルセンサー「圧電組紐」を活用し、一定の刺繍模様をパターン化することで、使用する生地や刺繍する位置によらず簡単にセンシングでき、ファッション性を兼ね備えることもできる世界初のセンシング技術「圧電刺繍(e-stitch)」の開発に成功したと発表した。

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 衣服を選ぶときの基準は何か。機能性や実用性、価格などに加えて、ファッション性は重要な要素であろう。

 今回の発表は生体認証センサーが糸状の圧電素子であることがミソだ。衣料用の生地に糸状の圧電体を刺繍し、着用者の生体情報を計測する。

 従来の「センシングのためにセンサーを着装する」発想から、「ファッション性と機能性を活かした服装がセンシングを兼ね備える」となる。

 この圧電刺繍(e-stitch)は、17日から東京ビッグサイトで開催された「第4回ウェアラブル EXPO」で初めて展示された。

●圧電素子とは

 圧電体は、圧力を加えると電気エネルギーを発生し、逆に電気エネルギーを加えると伸縮する特性を有する物質の総称。セラミックなどが代表素材である。

 圧電現象を利用した身近なものはライターの着火石であろうか。圧力を加えて、高い電圧が発生することで、火花を発生。ガスに着火する仕組みだ。

 この圧電現象は19世紀、ピエール・キュリーとジャック・キュリーの兄弟が発見した。2人はこの功績により、ノーベル物理学賞受賞した。

●圧電刺繍(e-stitch)の特長

 日本の伝統工芸である「組紐」の技術を用いることにより、1 本の紐で伸び縮み、曲げ伸ばし、ねじりといった動きをセンシング。

 柔軟かつ屈曲性のある紐状のセンサーであり、はんだ付けが不要であり、刺繍糸のように扱えるという。例えば、クロスステッチ刺繍で曲げを、チェーンステッチ刺繍で伸縮、ねじり、曲げを認識する。

●生体認証センサー(帝人と関大、圧電刺繍(e-stitch))のテクノロジー

 圧電体としては、一般的にセラミックを利用するが、柔軟性に欠けることや、鉛を含むことで用途が限定される。そこで、環境配慮型素材であるポリ乳酸を圧電体に採用。

 関大と帝人は2012年、ポリL乳酸とポリD乳酸を積層させることで強力な圧電性能を発揮し、柔軟性と大面積への対応を実現した圧電積層フィルムを共同開発。これを皮切りにポリ乳酸の圧電体としての活用を推進している。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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