「DEVILMAN crybaby」はオリジナル「デビルマン」!絶望エンドを見事に映像化した名作
2018年1月18日 11:40
■はじめて原作ラストを映像化した「DEVILMAN crybaby」
2018年1月3日に放送された「君の名は。」途中のCMで流れ、多くの人が注目した「DEVILMAN crybaby」。永井豪の代表的作品である「デビルマン」の映像作品で、1月5日からネットフリックスにて独占配信された。
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過去にも「デビルマン」のアニメ版は放送されているも、こちらはオリジナルストーリーのため設定からラストまで漫画とは全く異なっていた。それ以降も「デビルマン」のアニメは何度か製作されたが、漫画オリジナルのラストに挑戦する監督は誰もいなかった。
しかし、「DEVILMAN crybaby」を担当した湯浅政明監督は、過去に誰もが挫折した漫画オリジナルのラストを描き切ることを決めた。実際にそのラストを確認してみると、漫画と同じようなカタルシスを感じられる映像作品に昇華されていた。
■変更を加えつつオリジナリティを損なわない「DEVILMAN crybaby」
「DEVILMAN crybaby」はオリジナル「デビルマン」をベースに、湯浅監督によって各部分に変更点を加えられた映像作品だ。物語の主人公が不動明であることや、彼が牧村美樹の家に居候している点は同じである。それ以外にも、キーパーソンとなる飛鳥了の存在や、デビルマンのライバルであるシレーヌも登場している。
主な変更点としては、牧村美樹に嫉妬して悪魔と合体するミーコというキャラクターの存在。そして、ミーコと同じく美樹に惹かれるラッパー集団の存在だろう。ミーコは美樹と同じ名前でありながら、なんでも自分よりもできる彼女に劣等感を覚える人間として登場。そして、ラッパーはオリジナル作品に登場する不良の代わりとして登場すると共に、湯浅監督流の演出を光らせる存在としても一役買っている。
特に大きな変更点は、主人公である不動明が涙もろいという点だろう。明は悪魔と合体する前・後のどちらにおいても、悲しい思いをしている他者がいれば涙を流すキャラクターとなっている。こうした変更点がタイトルにも含まれているのだが、この設定がより「デビルマン」に深みを与える要因になっている。
■ラストの疾走感をそのままに明と了の感情を最大限に表現
実は、オリジナル「デビルマン」のラストはほとんど台詞は存在せず、明と了の戦闘シーンがまるで絵画のようなタッチで何ページにも渡って繰り広げられる。作者自身に悪魔でも乗り移ったような迫力があるのだが、「DEVILMAN crybaby」もそれに負けない感動的なラストとなっている。
本作品においてデビルマンとなった明は、最後まで涙を流しながら戦っていた。これは悪魔となっても人間の心を捨てなかった暗示となっている。これに対して元々悪魔であった了は、ラストで明と戦うまで他者を思う「人間の心」を理解できなかった。
激闘を経て、明と了は滅亡寸前の地球で2人切りになって話しだす。このときに了は、やっと他者を思いやる気持ちを理解し始める。しかし、残念ながら明は了から受けたダメージにより、瀕死の状態となっていた。返事のない明の身体を抱えながら、了は地球滅亡の瞬間を1人で迎えることになってしまう。
このシーンがオリジナル「デビルマン」だと抽象的で、明と了の関係性についてはフワッとしていた。この点に関しては「DEVILMAN crybaby」のほうが深みがあり、名作漫画を見事に映像化できたと言っていいだろう。
ラスト以外にもアニメ版「デビルマン」を使った面白い演出なども存在しており、非常に見ごたえのある作品であることに間違いはない。オリジナル版を知っている人も知らない人も、ぜひ一度は観賞していただきたい作品である。
「DEVILMAN crybaby」はネットフリックスにて配信中。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る)