咲くことのない珍しい花、クロヨウムランの生態 神戸大の研究

2018年1月16日 21:39

 神戸大学、熊本大学、そして在野の研究者である福永裕一氏らは、これまでラン科植物「クロムヨウラン Lecanorchis nigricans」として知られていた植物が実は「トサノクロムヨウラン Lecanorchis nigricans var. patipetala」という別の植物であり、本物のクロヨウムランは蕾のまま自家受粉するため花を咲かせない特殊な性質を持つ植物であることを明らかにした。

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 菌従属栄養植物というものがある。光合成を行わない特殊な植物である。多くが地下に生息する為研究が進んでおらず謎の多い分野であるが、端的にいえばクロムヨウランはこの菌従属栄養植物の一種であったということだ。

 クロヨウムランは1931年に発見された。和歌山県西牟婁郡岩田村で樫山嘉一氏の採取した標本を本田正次氏が研究し発表したのだが、これは「花は正開セズ、花被ハ相接シテ円筒状ヲナス」とあった。

 ところがその後、クロムヨウランは一時的にだが花をつける、という、結論からいえば誤っていた認識が広まった。何故かというと、別種の、しかしよく似たトサノクロムヨウランという植物は花が開くからである。これが混同され、クロムヨウランは咲く、という話になってしまっていたのだ。

 ところで菌従属栄養植物のすべてが花を咲かせない、あるいは花を持たない植物であるというわけではまったくない。ただ、クロムヨウランは非常に昆虫の少ない環境に適応した植物である。自家受粉のために花を開くにもエネルギーは必要になる。それが無駄であるために、クロムヨウランは花を蕾のままで自家受粉させるように進化したのではないか、と研究グループは推測している。

 なお、研究の詳細は、国際誌「Phytokeys」にオンライン掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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