医療・福祉事業と飲食業の倒産件数、2017年も増加 東京商工リサーチ調べ

2018年1月8日 11:38

 東京商工リサーチの調査によると、2017年も医療、福祉事業と飲食業の倒産件数が増え続けており、2つの業界の厳しい事情が垣間見える結果となった。

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■2000年以降、増え続ける倒産件数

 5日、東京商工リサーチが2017年の「『医療、福祉事業』の倒産状況」を発表した。12月29日時点における、2017年の医療、福祉事業の倒産件数は249件。前年から23件の増加で、介護保険法が施行された2000年以降で最多だ。

 2000年以降の推移をみると、2006年までは倒産件数が2桁に留まっていたが、2007年に125件と3桁に乗せる。2015年までは150件前後で推移していたものの、2016年に226件となり、2年連続で倒産件数が200件を超えている。これは2006年に改正介護保険法が施行されたこと及び、2015年に介護報酬の改定が行われたことと無関係ではないだろう。

■負債総額も増加傾向に

 2017年の負債総額は約363億円で、前年から約27億円の増加。2016年から2年連続で負債総額が増加した。

 2007年には負債総額が600億円を超えたこともあったが、近年は比較的小規模事業者の倒産が増えていたことから、2015年まで負債総額は減少傾向にあった。2017年も負債1億円未満の倒産が211件と8割以上を占めている傾向は変わりないものの、件数の増加が負債総額につながったようだ。

■飲食店の倒産件数が2年連続で増加

 東京商工リサーチでは、同日に2017年の「『飲食業』の倒産状況」も発表している。12月29日時点における2017年の飲食業の倒産件数は762件で、前年から123件の増加だ。

 業種別で倒産件数が最も多かったのは、「専門料理店」(2017年の倒産件数:203件、前年比+13.4%、以下同じ)だが、「食堂、レストラン」(200件、+34.2%)、「酒場、ビヤホール」(115件、+35.2%)、「喫茶店」(44件、+34.0%)などでも倒産件数が増えており、飲食業全体が苦境に陥っているのが分かる。

 負債総額は約416億円で、前年から約80億円の増加。負債1億円未満の倒産が約9割を占めているものの、医療、福祉事業と同様に、倒産件数の伸びに合わせて2年連続で負債総額が増加した。

■倒産の原因はどちらも販売不振

 医療、福祉事業における倒産原因で最も多いのが販売不振(業績不振)で、倒産件数の137件は全体の55.0%となる。飲食業でも販売不振を原因とした倒産件数は618件で、全体の81.1%を占めている。

 東京商工リサーチでは、「(老人福祉・介護事業は)安易な起業や本業不振のため異業種からの参入など、事前準備や事業計画が甘い小・零細規模の業者が思惑通りに業績を上げられず経営に行き詰まったケースが多い」と見ている。

 飲食業では、コストアップやビジネスモデルの持続期間の短さとともに、「消費者が景気上昇の実感に乏しいことも、外食や飲酒など飲食関連に向ける個人消費の伸び悩みの背景として考えられる」と指摘している。他業種の倒産件数が減少や横ばいにある中、この2業種の先行きには厳しいものがありそうだ。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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