エジプトのミイラ2体から癌の痕跡が発見される 世界最古の症例
2017年12月22日 11:56
●9才の男児と成人女性のミイラから見つかった癌
世界最古の癌の症例が、2体のミイラから発見された。ミイラは、エジプトのアスワンにあるエル・ハワの遺跡から発掘された9才の男児と成人女性のものである。
グラナダ大学率いる国際調査チームはCTスキャンの調査を行い、女性には乳癌が、男児には多発性骨髄腫が認められたと発表している。
●保存の状態が良かった1800年~2000年前のミイラ
アスワンのエル・ハワは、紀元前2500年頃から上層階級の墓地として使用されていたことで知られている。
このエル・ハワで発見された非常に保存状態の良いミイラ2体は、アスワン大学付属病院に運ばれた。そこで、グラナダ大学法医学部や人類学部が率いる国際研究チームにより、CTスキャンを使用し124枚の断層撮影画像の作成に成功した。
体の構造や頭部も保存状態がよく、女性は紀元前2000年頃に乳癌で、男児は紀元前1800年頃に多発性骨髄腫で亡くなったことが判明した。
●骨に残されていた病状
2体のミイラから発見された癌は、歴史上最も古い症例となる。
さらに今回の調査で2体のミイラは当時の上層階級に属しており、癌の根本治療が難しかった時代においても充分なケアを受けていたことも判明した。推測では、癌を患っていたこの2人は長い闘病生活を余儀なくされたといわれている。その痕跡が、ミイラの骨に残っていたのである。
しかし、今回のミイラよりあとの時代のものからは病名が探れた例がない。研究者たちは、次のように推測している。
古代エジプト時代の死因の多くは伝染病であり、短期間で死亡するかあるいは回復するケースが大半であった。そのために、ミイラにその痕跡が残されるまもなく死亡することがほとんどであったと想像される。
●容貌さえも再現できそうな保存状態
癌が発見されたミイラ2体は、豪華な布に包まれ丁寧な遺体の処理が施されていた。
調査チームの一員である人類学教授ミゲル・セシリオ・ボテッラ・ロペス氏は、「遺体を包んでいた布は、4000年前のものであるにも関わらずとても色彩豊かでした。遺体の処理も丁寧にされており、ミイラの顔立ちや表情さえも残っているように見えました」と語っている。