NHK受信料と公共放送への期待
2017年12月18日 12:38
今月6日、最高裁判所大法廷はテレビを持つ人に受信料締結契約を義務付ける放送法64条の規定は「合憲」とする判断を行った。
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判決では「特定の個人・団体・国家機関等から財政面での支配や影響が及ぶことがないようにし、広く公平に負担を求めることによって、事業運営の財源を受信料によって賄うこととした」ものとしている。
国家権力からも、特定の団体、個人からも影響を受けることなく、受信料で支える事は「憲法の保障する『国民の知る権利』を実質的に充足すべく採用され、その目的にかなう」からだと、受信料制度の合理性を示し、国民の知る権利を充足する役割を、まさに合憲の根拠としている。
また、判決では「NHKからの一方的な申し込みによって受信料支払い義務を発生させるものではなく、双方の意思表示の合意が必要であることは明らか」とした。
しかし、NHKが裁判を起こせば、テレビ設置日に遡って、受信料支払い義務が生じることになる。また負担の公平性の観点からは900万人とされる受信料未納者がその債務を履行することが必要になる。
一方で、NHKが受信料制度に見合った「自主・自律の公共放送」としての役割を果たしているのか。受信料未納者「ゼロ」をめざすのに比例して、『公共メディア』としての役割を果たしているといえるのかどうかも常に問われ続けなければならない。
放送法は日本放送協会が国民を戦争に駆り立てた反省から生まれ、国民の知る権利を充足するために、時の権力や特定団体などに左右されないことを担保するため、受信料制度が生まれた。その経緯をみれば、すべての国民が『NHKの番組制作や報道姿勢、報道内容に』その役割を果たしていると感じ、NHKの存在の必要を感じ、快く受信料を納めるものにしなければならない。
「政府が右というものを左というわけにはいかない」などと平然と言う姿勢では、NHKは必要ない。ただ、籾井勝人前会長時代より、現在の方が、さらにニュースの報道姿勢に「忖度」しているのではないか、と感じることが多い。
さらに多種多様な媒体がある中、NHKが果たすべき役割とは何なのか。NHKの存在意義を含め、放送法の見直しや公共放送のあるべき具体的な姿について、国民的議論を行っていくことも必要ではないか。
時の権力に切り込む報道、ドキュメンタリー、費用やスポンサーなどの制約を受ける民放にはできないレベルの番組づくりなど、バラエティ番組や娯楽番組は民放に任せ、NHK本来に期待される報道、特に、災害時や国民的な議題を審議している衆参での委員会では、予定番組を変更してでも、予算委員会に限らず、文教・内閣など他の委員会の中継も総合テレビで放送することが望まれる。視聴率に左右される民放ではできないことを国民の視点で行うべきだ。国民負担(受信料)と見合った仕事をNHKのみなさんには期待したい。(編集担当:森高龍二)