【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆NY株高値波乱を考える◆
2017年12月10日 09:40
*09:40JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆NY株高値波乱を考える◆
〇ロシア疑惑より、フラット派の攻勢か〇
1日のNYダウは一時350ドルの急落となったが、0.2%安の40ドル下落に戻して終わった。ナスダックは0.4%安。月末ドレッシングが剥げ、ある程度は安くなると思っていたが、思わぬ高値波乱となった。フリン氏訴追で政治混乱懸念で急落、税制改革法案上院通過で急速に持ち直したと解説されている。
「ロシアゲート」再燃には違和感がある。トランプ大統領の支持率が10月末の33%(ギャラップ調査)から、アジア歴訪終盤で46%に跳ね上がり(保守系のラスムッセン調査)、その後も40%台で安定していると報じられていたからだ。支持率回復の要因は、ロシア疑惑はクリントン氏に移っていたこと(国策会社カナダ・ウラニウムワンの株式を2010年にロシア企業に売却する際、クリントン国務長官が便宜を図り、クリントン元大統領の5000万円講演収入や1.45億ドルの巨額献金をクリントン財団が受け取っていた疑惑。当時のFBI長官がミュラー現特別検察官。証人の議会証言が阻止された、ヒラリー疑惑の一つ)。「本物のロシア疑惑」と呼ばれている。もう一つ、オバマ政権の有力者、ハリウッド・セクハラスキャンダルのワインスタイン氏騒動も、トランプ大統領の追い風と見られている。
今回、沈静化していたティラーソン国務長官の辞任観測がほぼ同時に流されたことで、売り仕掛け的な臭いがする。得をするのは、ヘッジファンドの「フラット」派(長短金利差の縮小から逆転まで狙う動き、ドル売りも仕掛けているとされ、株安は追い風材料になる)。債券市場では、10年物国債利回りは前日の2.415%から一時2.315%に急低下、終値は2.3633%。30年債は前日2.831%から一時2.716%に急低下した(2年債は1.7781%で、あまり動かず、フラット化が進行)。
珍しく、二人の地区連銀総裁発言が材料になったと思われる。セントルイス地区連銀のブラード総裁は、経済の「弱気なサイン」について警告し、金融正常化に向け一段と慎重になる必要があると述べ、「向こう1年以内に長短逆転が起こる可能性」を指摘した。ダラス地区連銀のカプラン総裁は「長短金利差の縮小は成長が鈍化するとの見通しが出ていることを示し、利上げペースに影響する可能性がある」と述べた。
両総裁とも、減税法案に言及していないので、大勢とは思えないが、フラット派を勢いづかせた可能性がある。そこに飛び込んできたのが、フリン氏訴追ニュースで、弱含みが波乱に増幅されたと考えられる。動きはチグハグで、今朝のドル円は112円台後半に戻っている。IMM通貨先物建玉で、円ショートは11月14日の13万5999枚から28日に11万640枚に減少、調整(円買戻し)一巡感が出ているものと思われる。週末の米雇用統計、および来週12-13日FOMC前の攻防が続くと思われるが、「フラット」派の攻勢は次第に萎んで行く可能性が考えられる。最終ステージ(上下両院の調整)に進んだ減税法案の行方、本日から5日間の日程で行われる米韓空軍演習なども見極めて行く展開が想定される。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/12/4号)《CS》