【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆静かな環境下、為替が気になる◆

2017年12月3日 09:40


*09:40JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆静かな環境下、為替が気になる◆
〇サウジマネーに一巡感、静かな環境下、為替に神経質か〇

アラブの駆け引きは、よく分からないが、サウジの王族大量拘束での財産没収は11兆円規模に収まるようだ。90兆円規模との観測もあっただけに、懸念は後退しよう。欧州株が週間ベースで3週間ぶりにプラスに転じ、24日の米株はS&P500とナスダックが最高値を更新した。

11月第3週(13-17日)の日本株では、海外投資家が3211億円の現物株売り越しとなった。11月に入って既に買い越しは細っていたので、サウジマネーの売りがあったとしても、数千億円の感触。サウジと関連が深いと看做される、あるいは王族好みと見られる三菱重工、三菱電機、コマツ、日立などの軟調な動きは、インフラ低迷だけではないように見える。結果、9月第4週からの海外投資家による現物買い越しは7週連続で一旦終わった。この間の買い越し額は2兆5538億円に達する。9月までの年間累計が6898億円の買い越しに留まっていたことから見ると、かなり劇的だった。このままだと、年間3兆円上回る買い越しとなる可能性があり、13年の15兆円規模には及ばずとも、14年以降では最大規模(16年は3兆6887億円の売り越し)になる。

年末相場、いわゆる「餅つき相場」に入る。年末(海外ファンドは決算)のポジション調整と来年のポートフォリオ構築の動きなどが交錯し、餅代稼ぎの短期売買が主流になり易い局面と言うことで、方向感が得られ難い展開で言われる。潜在的には、北朝鮮情勢、ブレグジット交渉ヤマ場、ドイツ政権交渉などあるが、米国情勢が関心を集めそうだ。

注目のブッラクフライデーは、ネット販売が+17.9%で過去最高と報道されているが、実店舗は閑散との報道もあり、大きく盛り上がった気配は無い。感謝祭休み明けの議会で、減税法案審議の行方が注目される。24日のNY為替市場でドル指数(主要6通貨)は2ヵ月ぶり安値に沈んでおり、減税法案不調はドル売りにつながる懸念がある。また、先週公開されたFOMC議事録でインフレ見通しの弱さが議論され、長短金利差は11月に20bp縮小しており、フラット化や逆イールド化まで議論されるようになれば、ドル円の弱含みにつながろう(10年債利回りは2.34%、2年債との差は59bp、07年終盤の57bpに迫る低水準)。NY連銀が発表した第3四半期末の家計債務は過去最大の12兆9600億ドルに膨れ上がっており、米経済への警戒ムードを生ずるリスクがある(それまでの記録は08年第3四半期末)。日本株の下値切り上げ展開には、ドル円110~115円のボックス観が維持される必要がある。
波乱要因は原油相場か。一時2年半ぶりの59ドル/バレル台に上昇。30日のOPEC総会に向け、ロシアとOPECが18年末までの減産延長で枠組み合意(詳細未定)と伝えられている。60ドル台に乗せてくるようだと、インフレ観に影響すると思われる。


以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/11/27号)《CS》

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