世界初、機械的構造を持たない人工膵臓を開発 東京医科歯科大など
2017年11月30日 15:41
東京医科歯科大学と名古屋大学からなる共同研究グループは、エレクトロニクスフリーかつタンパク質フリー、すなわち、機械的構造を持たず、タンパク質をも利用しない、しかしインスリンの自律的放出を行う機能を持った、人工膵臓の開発に成功した。
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糖尿病の治療にはインスリンが必要である。その手段の一つとして、インスリンポンプがある。簡単に説明すれば、自動的にインスリンを注入してくれる、外付け式の人工臓器である。
ただし、侵襲性などの患者に及ぼす負担、機械であるがゆえのメンテナンスの煩雑さ、運用コストの問題など、インスリンポンプの使用に伴う問題はさまざまある。
そこで、電気的駆動を必要としない自律型の人工膵臓がいま強く求められている。従来の研究としては、タンパク質を基材に用いる発想の研究が多い。ただ、生来由来材料となるため、タンパク質が変性してしまう問題、毒性の発生などが不可避で、実用化に辿り着いた例は一つもない。
そこで今回開発されたのは、高分子ゲルに、グルコースと可逆的に結合する性質を持つ「ボロン酸」を科学的に組み込んで、さらにそれを一本のカテーテルに搭載した、インスリン供給デバイスである。皮下挿入が容易であり、人工膵臓としての機能を充たす。マウスを用いた実験では、I型糖尿病、II型糖尿病のいずれのモデルマウスにおいても、3週間以上、この人工膵臓は機能を維持し続けたという。
上記のように研究はまだ動物実験の段階ではあるものの、エレクトロニクスフリー且つタンパク質フリーの人工臓器の開発に道を拓くものとして、この研究の意義は深い。いずれ実用化の暁には、機械式人工臓器よりコストが低く抑えられることも見込まれ、それにより、発展途上国などでの普及も考えられる。
なお、研究詳細はScience Advancesに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)