理研ら、核のごみの大幅な低減と資源化目指し研究 実用化への期待膨らむ

2017年11月20日 12:13

 原子力発電所で排出される高レベル放射性廃棄物、これを大幅に低減・再利用するという革新的研究開発推進プログラムが進行中だ。

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 内閣府の革新的研究開発推進プログラムの一つとして、2014年より、「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」を実施。理研仁科加速器研究センターなどから研究者が参加している。

 このプログラムでは、高レベル放射性廃棄物に含まれる「長寿命核分裂生成物(LLFP:Long Lived Fission Products)」を、放射能のない安定な原子核や短寿命のものに核変換するとともに、有用な元素を分離回収して資源として再利用することを目指している。

 原子力発電所からでる高レベル放射性廃棄物はガラス固化し、放射能が問題のないレベルに下がるまで、地下300メートル以深で約10万年にわたり隔離して保管する必要がある。日本には、すでに2万数千本のガラス固化体が存在するが、人類にとって10万年は想像を絶する期間であり、不安は払拭されていない。

 原子力発電所から出る使用済み核燃料の再処理について7月、青森県六ケ所村で進める放射性廃棄物の保管の総事業費が1.3兆円膨らみ、13.9兆円に上る見通しとなったと発表。安全対策工事の増加が主な理由である。

 高レベル放射性廃棄物の問題は、原子力発電の賛否に拘わらず、解決しなければいけない問題であり、本プログラムへの期待が膨らむ。実用化できるかどうかは不透明な部分もあるが、2つの放射性物質では、基礎データの取得はできているという。

●原子力発電の仕組み

 原子力発電は、核分裂しやすいウラン-235に中性子が衝突して核分裂が起きるときに発生するエネルギーで発電する。

 ウラン-235は核分裂してセシウムやパラジウムなどの「核分裂生成物」になるとともに、中性子を発生。その中性子がさらに別のウラン-235に衝突し、連鎖的に核分裂反応する。

 この「核分裂生成物」が高レベル放射性廃棄物であり、その内の7種類が半減期(放射能が半分になる期間)10万年以上のLLFPである。

 他方、核燃料中の核分裂しにくいウラン-238などが中性子をつかまえて、ウランよりも重い元素になったものを「マイナーアクチノイド(MA)」と呼ぶが、これも高レベル放射性廃棄物である。

●核のゴミ低減(LLFP核変換、理研)のテクノロジー

 高レベル放射性廃棄物を、放射能のない安定した元素、もしくは低レベル放射性廃棄物へと変換する具体的な道筋を研究している。

 同じ元素でも、中性子数の違いにより質量数(陽子数+中性子数)が異なる同位体が複数存在し、放射能レベルや崩壊するまでの寿命が大きく異なる。

 そこで、LLFPやMAの核種毎に中性子や陽子などのビームを照射し、またはLLFPビームを陽子などに照射して、陽子や中性子の数が異なる安定核(放射性廃棄物減少)や半減期が短い別の核種(保管期間の短縮)に核変換する。

 例えば、半減期650万年の放射性廃棄物であるパラジウム‒107は、核燃料1トン当たりに300グラム含有する。これに、重陽子ビームを照射すると、自動車の排ガス浄化触媒で使う希少金属パラジウム-106に変えることが可能という。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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