サービス残業は時間外労働の31.5%、残業時間過少申告の20%が上司命令

2017年11月15日 10:25

 連合総研は11月1日、10月に実施された9月分の不払い残業、いわゆるサービス残業に関する実態調査の結果を公表した。

【こちらも】サービス残業撲滅は、業務量と効率のセットで見直さなければ進まない

 日本の労働生産性についてはジャパン・アズ・ナンバーワンと言われていた時代から世界中の経営専門家によって疑問視されてきた。それは日本の経済は勤労者の長時間労働に支えられているからである。この問題はサービス残業の問題として表面化した。このサービス残業は統計数字上、表には現れない。しかし、見えないところで長時間労働が行われ日本の付加価値生産を支えているということを意味する。日本の実際の労働生産性は統計数値よりずっと低いということになる。

 連合系のシンクタンク、連合総研はこのサービス残業の実態について調査を続けている。この最新の調査結果を含む「第34回勤労者短観」が11月1日公表された。調査の結果9月の所定外労働があった者は全体の33.8%で、その平均時間は36.1時間となっている。男女別・正規・非正規別の内訳としては男性正社員の42.3時間が最も長くなっている。所定外労働をした理由としては「人手が足りないから」46.3%、「突発的な仕事があるから」44.4%の2つの理由が突出して多くなっている。

 賃金不払い残業、いわゆるサービス残業については「賃金不払い残業は依然解消されず」と結論づけられており、調査結果では所定外労働を行った者のうち31.5%が残業手当の未申告があったと回答している。不払い残業の平均時間は18.0時間に達している。

 性別および世代別で見ると40代男性が40.5%と最も高く、次いで30代男性37.5、50代男性の36.4%が目立って高い割合を示している。賃金不払い残業を行った者の70.5%が自発的に過少申告しており、その理由は「時間どおり申告しづらい雰囲気だから」が35.2%、「残業手当に限界がある」21.9%で半数を超える。また「上司から過少申告するように指示があった」と答えた者は19.5%と2割近くにも達している。このケースでは組織的に不払い残業が行われている可能性も否定できない。

 サービス残業を含む長時間労働は勤労者の健康を蝕む危険性が大きく、最悪の場合は自殺や過労死に至ることは既に周知のことである。さらに不払い労働は勤労者の所得向上にもつながらず内需創出効果もない。本調査では残業代を申告しづらい日本の企業風土や、さらにそれを当然のこととして上司命令による過少申告が常態化している実態があきらかとなった。こうした習慣を払拭しなければ日本経済の実質的な労働生産性の向上は実現不可能で、国際競争力も失って行くだけであろう。(編集担当:久保田雄城)

関連記事

最新記事