【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(5):「自壊相場の行方」
2017年11月12日 10:20
*10:20JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(5):「自壊相場の行方」
〇上げ過ぎ反動?サウジ情勢?米減税?
昨日の東京市場は、日中値幅859円の記録的乱高下となった。不可解な朝高(460円超上げの2万3382円まで買われた)の後、午後1時半頃から急落、一時は390円安となったが急速に戻し、前日比45円、0.2%安で終わった。当面は、落ち着きどころを探る必要があるが、22000~23500円ゾーンを軸に想定したい。
とくにキッカケとなるような材料は見当たらず、本日の11月限日経平均先物ミニ・オプションの特別清算指数算出(SQ)に絡んだ取引と見られ、上げ過ぎの反動による自壊相場の印象を与えた。日経平均先物ミニの取引高は243万6690枚、オプション取引高は41万5570枚、一年前のトランプ当選による乱高下時に次ぐボリュームに膨らんだ。結果的に、23000円コールの儲けは画餅となった。こういう場合は、往復で稼いだ人は少なく、往復ビンタを喰らったケースが話題になることが多い。投資家心理を冷やしたものと思われる。
一つ、時間帯から見て需給憶測がある。汚職取締りで混乱するサウジの換金売りだ。崩れた時間が中東の朝で、欧州市場の下落率が大きくなっている点で思惑を誘う。日本株が直接の対象でなくとも、欧米での売りを想定し、外資系がヘッジ売りを行った可能性がある。独株1.49%安、仏株1.16%安、英株0.61%安など、軒並み日本株を上回る下落で、6bp上昇の0.38%となった独10年物国債利回り上昇のコメントには、「一部の実需筋が朝方売りを出した」と伝えられる。
サウジの汚職調査は200人以上、資金総額11兆円規模、凍結銀行口座数は1700件を超えたと伝えられる。実情が分かり難く、サウジへの投資、これら資産家の投資・運用資金引き揚げの両面で影響が広がると懸念されている。欧州株の下落率は、英バーバリー10.0%、独シーメンス3.7%、デンマークの風力最大手べスタス19.1%など、小売、住宅、資源・エネルギーなどが中心、金融株は逆に上げている。欧州市場にも需給要因があるのか知らないが、「アラブ好み」が売られ易く、売り込み銘柄は買い戻され易い印象だ。
NYダウは一時253ドル安から101ドル安まで戻したが、解説では、税制改革の先送り懸念と伝えられた。一部、有力共和党議員が減税先送りに言及しているようだ。米中首脳会談や中国との28兆円商談が、ほとんど話題になっていないのが奇異に映るが、連日の最高値更新相場に一服感があるようだ。
北朝鮮の出方に不透明感があるが、米中首脳会談でのやり取りを見ていると、当面の軍事衝突リスクは遠退いた印象を受ける。「北朝鮮の核を認めず、核放棄まで経済制裁」との姿勢を中国が遵守するのか、北朝鮮の困窮度が増すのか、などが焦点。また、米中通商摩擦の激化も避けられそう(知的所有権など各論は別)で、緩やかな追い風になろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/11/10号)《HT》