人口減少・高齢化を自治体レベルで予測の「未来カルテ」、無料配布へ

2017年11月12日 08:30

 JST社会技術研究開発センター(RISTEX)が推進する戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)の「多世代参加型ストックマネジメント手法の普及を通じた地方自治体での持続可能性の確保」において、倉阪秀史 千葉大学 大学院教授らは、「未来カルテ」発行プログラムの無料ダウンロードを開始した。

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 労働人口減少・高齢社会の拡大に伴い、介護、医療、保育、教育、建設業、農林水産業などの、資本基盤の維持管理(手入れ)を行う人材不足が深刻化している。人口減少・高齢化に備えるためには、長期的な視点に立って、各自治体において過剰な資本基盤を抱えないようにコンパクト化を進めるとともに、その維持管理を行う人材の育成が急務となっている。

 資本基盤とは、「有用性をもたらすメカニズムを備えた存在で有用性を与えることによってなくならないもの」と定義され、ひとびとの暮らしを豊かにし、新たな知識と活力とを創造し、持続的な発展を実現するのに不可欠な社会の「土台」である。この土台を支える人材の不足が社会にもたらすインパクトは多大なものと考えられるが、十分実感されているとは言い難い。

 そのような背景を受け、人口減少・高齢社会のインパクトを地域レベルで実感できるよう開発されたのが「未来カルテ」だ。「未来カルテ」には、現在の傾向が継続した場合の2040年の産業構造や、保育、教育、医療、介護の状況、公共施設・道路、農地などの維持管理可能性など約10分野について、国勢調査や国立社会保障・人口問題研究所の人口予測などの各種統計データを用いて、5年ごとの推移をシミュレーションした結果が掲載される。さらに、単に人口予測や産業構造、介護、医療などの現状を図示するに留まらず、人口予測データに紐づける形で、現在の傾向が継続すれば将来どのようなことが起こるのかを示すという。

 「未来カルテ」の情報は、現在の傾向を知り未来の政策へ活かす為の「気付き」の手段としてその活用が期待されている。例えば、中学生・高校生が2040年の未来市長として政策提言を行う「未来ワークショップ」など、将来の課題に気づくための各種研修プログラムで活用されることを想定しており、自分が過去世代から地域を引き継ぎ、未来世代に引き渡す役割を担っているという認識が生まれる若者世代における当事者意識の育成が期待されている。長期的な持続可能性を確保するための政策形成に大きく寄与する見込みだ。(編集担当:久保田雄城)

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