教育無償化、若年層の社会保障拡充 将来世代の負担増となる懸念も

2017年11月12日 10:54

 10月22日の衆院選で自民党が単独過半数を大きく上回った。この結果は一般に安倍政権が信任されたと解釈され、アベノミクス継続が約束されたと考えられている。安倍首相は23日、今回の衆院選の結果に関連して記者会見を行った。その中で安倍首相は新たなアベノミクスの一環として少子化対策にさらに力を注ぐことを示し、幼児教育無償化を優先課題とする意向を示した。

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 さらに、その財源については8%から10%に増税される消費税からもってくる考えだ。増税によって見込まれる増収分5.6兆円の内4兆円を借金返済である国債費に当てる予定だったが、このうちの1.7兆円を幼児教育無償化の財源に振替える方針である。実施の時期は2019年から予算化し具体的に始動して行くことを明らかにしている。

 安倍政権は幼児教育無償化を成長戦略の一つと位置づけており、幼児教育無償化によって家計にゆとりが出来ることで消費が刺激され、内需が増大し脱デフレ効果につながるとしている。消費税の使途の変更は、財政健全化よりも成長戦略を優先するという考えを示している。消費税の使途の変更はプライマリーバランス(単年度収支均衡)の黒字化を遅らせるものであり、安倍首相は既に20年を目標としていた黒字化を延期すると表明している。

 現在、一般会計に占める借金返済費である国債費の比率は年々増加している。プライマリーバランスが赤字なのだから赤字国債を増発しなければならない。このため国債残高は増加傾向になるので、国債費の比率増大は当然のことだ。国債費の対一般会計総額の比率は1990年には20.6%であった。これが2000年には24.0%となり16年には24.4%と増加し続け一般会計の4分の1にまでせまっている。国債費は義務的経費であるから、このまま国債残高を増加させ続け、国債費の比率が増大し続けて行けば機動的に使うことが出来る裁量的経費の比率が減少し続けることになり、将来の人々がその時代に適合した行政サービスを受けることが難しくなるということである。

 安倍政権は社会保障を高齢者中心の社会保障から全世代型の社会保障へと方針を転換した。幼児教育無償化もその方針の一つとして実施されるものである。しかし、現在の国民の社会保障を拡充するために財政健全化を遅らせることは将来の世代がより大きな負担でより少ない受益しか得られないということになりかねない。財源の内容を十分検討し、将来世代に現在のツケを押しつけないように十分な議論・検討が必要だ。(編集担当:久保田雄城)

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