ワーキングプアから年金プアへ、老後破綻者が急増の恐れ

2017年11月10日 19:46

 低賃金の非正規雇用の労働者、いわゆるワーキングプアが増大し、それにともない国民年金保険料の未納者も増加している。こうした年金保険料未納のワーキングプアは高齢になっても老齢年金の支給を受けることが出来ず老後破綻が待っていると言える。就労困難となった無年金の高齢者対しての救済としては生活保護しかありえず、年金プア予備軍であるワーキングプアの増大は将来、生活保護費を増大させ、高齢化によって自然に急膨張して行く社会保障関係費をさらに増大させて国家財政を逼迫させる要因になることは間違いない。

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 総務省の労働力調査によれば平成12年(2000年)2月の非正規の職員・従業員数は1273万人で雇用者総数5267人の内24.2%であった。これが平成29年(2017年)7~9月には2050万人となり雇用者総数5839万人中の35.1%となり、人数で1.6倍に増加している。非正規雇用の内、派遣社員は平成12年2月に33万人であったものが平成29年7~9月には139万人と4.2倍の増加である。

 貧困化について国税庁の民間給与実態調査をみると、200万円以下の給与所得者の数は平成12年分(2000年分)に528万人と全体の11.7%であったものが平成27年分(2015年分)では719万人に増加し、全体の中の比率でも15.0%と増加している。

 国民年金の納付状況に関する直近の調査、平成26年国民年金被保険者実態調査をみると未納者(過去24か月、第1号被保険者期間の全ての保険料を納めていない者)の数は308万人にも上っている。この中で「保険料をおさめていないことについての意識別被保険者割合」をみると「もう少し生活にゆとりができれば保険料を納めたい」が71.0%となっており、年金保険料の未納の主要因が経済的な貧困にあることを表している。

 また、厚生労働省の毎月勤労統計調査から実質賃金の指数を見ると2000年に113.3であったものが2016年には100.7に低下している。これは非正規が増大したために指数値が減少したとも考えられるが、いずれにしろこの20年ほどで実質賃金の上昇はみられない。被正規雇用労働者の貧困化と数の増大は確実に生じている現実である。

 この年金プア予備軍であるワーキングプア増大の問題は一部の問題として矮小化することは出来ない。それは将来の生活保護費の膨張として社会保障費全体のバランスを崩す大きな要因であり、国民全体の問題であると言える。非正規雇用の正規化や賃金の底上げなど非正規雇用の労働者が少なくとも年金等の社会保険料を余裕をもって納付できる水準まで待遇改善を図って行くことが急務である。(編集担当:久保田雄城)

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