乃木坂東京ドーム公演で見えた「その先の未来」
2017年11月9日 21:48
『通常運転』という言葉は、コンサートやライブなどの場合、あまりいい意味では使われないものだ。特に、アイドルグループの場合、大きなライブではやはり特別な何かを期待する人が多いため、余計にそういう風潮が強い。
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しかし、高い水準でいつも通りのクオリティーを維持することは簡単なことではない。安定したパフォーマンスを提供することの難しさを理解しているアーティスト、あるいは演歌歌手などのファンは、それをよく理解しているものだ。
さて、11月7日に行われた乃木坂46の東京ドーム公演は、少なくとも記者にとっては『いつもの乃木坂』を堪能できた素晴らしい公演だった。
『制服のマネキン』から始まる、ハイテンポでノリのいい楽曲で会場を盛り上げ、MCを挟んで、可愛らしさを強調する『ぐるぐるカーテン』、そしてオリジナルメンバーでは最後の披露となる『他の星から』などの分厚い楽曲。
さらにアンダー中心のコーナーでは、かつてアンダーから選抜へと昇格していったアンダーレジェンドを一人づつスポットを当てる演出からのラストスパートと、まさに乃木坂の楽曲のクオリティーの高さを見せつける内容で満足度は高かった。
多くの観客もそうだったと思うのだが、公演後のネットでは、いささか期待外れだったという評価も散見された。
確かに、今回、『東京ドーム』という場所で行われることが、グループの目標、あるいは夢だったという空気を作り、散々煽ってきた割には、特別なサプライズがあったわけでもなく、選抜常連メンバーの若月佑美は2日目を別の仕事で欠席という事情もあり、かつてAKBが同じように「夢であった東京ドーム」を目指したときの熱とは差があったのは事実だ。しかし、考えても見て欲しい。
神宮球場3日間でさえ、チケットが手に入らないファンは多く、アンダーライブでさえ1万人収容クラスの会場を簡単に埋めてしまう今の乃木坂の勢いを見れば、東京ドームもまた坂の途中に過ぎない。メンバーも「まだまだ先がある」と話していたが、その未来のためにも、『平常運転』のクオリティーを上げていく必要があるのだ。
サプライズでファンの気を引き、話題性だけで人気を維持することは難しい。特別感のない『通常運転の東京ドーム』は、乃木坂がアイドルとして、さらにはアーティストとして、パフォーマンスで勝負していくためのきっかけになるのではないだろうか?
と、前向きな話で終わりたかったのだが、最後に残念なことも書いておかねばならない。
東京ドームは文京区という都内でも閑静な文教地区にあり、大きな騒音を出せないため、野球の試合ですら21時を回ると鳴り物入りの応援は禁止されている。
今回、チケットが取れなかったファンが、音漏れだけでも聞こうとドーム周辺に集まるのは仕方ないにせよ、公共の路上をふさぎ、大声でコールをし、静止する警備員を無視して暴徒化したことが報告されている。
こういう行為が周辺住民のクレームにより、今後施設を使えなくさせる可能性があるにも関わらず、自分さえよければいいという意識で騒ぐ人間にどう対処していくかという課題も浮き彫りになった。
区切りと謳った東京ドーム公演のサプライズが、厄介ヲタによる東京ドーム使用禁止と、機材の落下事故ということになったら、あまりにも悲しすぎるだろう。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る)