日本の高度人材不足、世界ワースト3 生産性の低下に影響
2017年11月6日 16:01
先月27日、英国系人材会社ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン株式会社(以下、ヘイズ)は、世界33カ国の労働市場おける人材の需給効率について比較、評価した調査「グローバル・スキル・インデックス」の一部を日本向けに公表した。この調査研究はヘイズが英国の調査機関オックスフォード・エコノミクスと共同で毎年行っているものであり、2012年から実施され今回で6回目となる。
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今回の結果では、日本において企業が求めているスキルと求職者が持っているスキルが大きく乖離しており、人材需給のミスマッチが深刻であることが改めて浮き彫りにされた。調査はグローバルに活動するヘイズが取り扱っている英米中など33国について行われ、各国の経済環境を考慮した評価ランキングでは日本は31位とされ、同率最下位だったスペイン、ルクセンブルグに次ぐワースト3位であった。
評価を大きく下げたのは特にIT分野での高度人材のミスマッチである。AI、ビッグデータ、IoTなどのIT技術の発展普及が進むなか、日本において、これらの技術に対応できるIT技術者、特にマネジメント要員として戦略や業務モデルをモデル化するスキルを持った高度人材が確保困難の状況にあることは以前より指摘されてきたことである。こうした高度人材の確保困難の状況が続けば、生産性の相対的低下は必然で、いずれ日本は産業崩壊を起こすとまで言われてきた。この国際比較の調査結果はまさにそうした深刻な状況に日本があることを数値面から「見える化」したと言ってよい。
しかも、日本企業にはITスキル以前に言語スキルの問題があり、さらに日本の企業ではこうした高度人材への評価が他国と比べ著しく低いという高度人材の処遇に対する企業体質の問題もある。IT等の高度スキルを持った人材にとって日本企業は魅力のない存在であり、この体質を変えない限りこの構造的で深刻な問題は解決されないであろう。
高度人材問題に関して昨年4月、安倍首相は政府主催の「産業競争力会議」において外国人高度人材の「永住権取得までの在留期間を世界最短とする」ことを宣言した。外国人の高度人材については2012年よりポイント制が導入され永住権取得の規制緩和が推し進められてきた。今年4月からは最短1年の永住権取得が可能となった。しかし、日本の企業の体質が外国人にとって魅力がなければ、高度人材が日本に集まることはないであろう。日本の産業界をあげて高度人材を適切に評価し処遇するシステムに企業体質を変えて行くことが急務である。(編集担当:久保田雄城)