三菱電機、社会インフラの高精度な計測・解析サービス ADAS技術の横展開
2017年11月6日 17:35
三菱電機は6日、道路・鉄道・トンネルの高精度な計測・解析サービスを開始したと発表した。高密度三次元レーザと高解像度ラインカメラを搭載し、道路・鉄道・トンネルの高精度な計測・解析を可能とした「三菱インフラモニタリングシステムII(Mitsubishi Monitoring System for Diagnosis II)」を活用する。
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2012年12月2日、山梨県笹子トンネルの天井板のコンクリートが、約130メートルにわたり崩落。走行中の複数の車両が巻き込まれて9名が死亡した。このような痛ましい事故を未然に防ぐには、定期的な診断が必須である。
定期的な目視や打音による人的な異常診断では、細心の注意を払っても見落としがなくなる保証はなく、設備の隅々までを完ぺきに検査することは事実上困難だ。
そこで、人的な診断を補完可能なスマートモニタリング装置が普及した。装置は、各種のセンシングに加え、画像認識や人工知能(AI)、IoTや無線技術、ドローンなどを駆使して、社会インフラの経年変化や損傷を検出する。
●開発の背景
国土交通省は2014年7月、土木構造物・道路構造物を適切に維持管理していくために5年に1回の近接目視定期点検を基本とするトンネル・橋梁等の定期点検要領を制定。また、鉄道トンネルでは2年毎の通常全般検査と20年毎の特別全般検査を義務付けた。
点検作業は、道路では交通規制を行って夜間の長時間作業となり、鉄道では作業可能な時間が営業時間外の短時間に限られるため長期にわたる作業になる。車両に社会インフラ監視システムを設置し、通常の運行を妨げないサービスがミソであろう。
●「MMSDII」の特長
8K技術の採用や各種センサーの高度化により、目視以上の精度を高めたのが前回からの改良である。
時速50キロメートルの制限はあるものの、8Kの高解像度で0.3ミリのひび、遊離石灰・漏水、ボルト取り付け状態も計測する。高速シャッターで撮影された画像は、自動で張り合わせて、全体像を映し出す。
高密度三次元データで構造物・設備の現状を正確に把握するという。毎秒200万点の位置座標を、ミリ単位の精度で位置座標(緯度・経度・標高)を高密度レーザ2台で収集する。この三次元データを、同一場所の過去の計測データとの比較により経年変化を検出すれば、点検箇所の絞り込みが可能となる。
撮影された画像や、計測したデータでの異常個所や変位は、変状展開図に自動で反映。手作業での手間は最小限となる。
●社会インフラ監視システム(三菱電機、「MMSDII」)のテクノロジー
三次元地図情報の計測技術は、先進自動運転システム(ADAS)の要である。「MMSDII」のセンシングや三次元構造物のミリ単位での認識は、この技術の横展開と思われる。
今後の展開として、トンネル壁面内部の空洞など目に見えない変状の計測解析技術にも着手するという。老朽化物ではこの需要も大きいと思われる。
なお、今回のサービスは、第5回鉄道技術展(11月29日~12月1日、幕張メッセ)に出展するという。(記事:小池豊・記事一覧を見る)